menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

平和

高知の掩体

雷雨

シナリオ・センター代表の小林です。朝から雷雨でびっくりしていたら、急にピーカンになり、研修を終えて外に出たら、ちょっと雨雲が・・・なんだなんだこの天気、こわーい!!しかもめちゃ局地的。
昨日は、表参道(シナリオ・センター)と市ヶ谷(私の住居の駅)が大雨で駅に水が溢れているニュースが流れ、友人から安否確認メールをたくさんいただきました。
ホント、今や都会のど真ん中だろうが一寸先は闇です。
ご心配いただいた皆様ありがとうございます。
なぜか私は、すべて雨に会わず、強運の持ち主でした。(笑)

見せる

出身作家の柚木麻子さんが、8/22の朝日新聞の全15段に「日常から消えたあの戦争」というお話を寄稿されて、その論点の鋭さに感じ入りました。
それは、柚木さんはじめ70・80年代の子どもたちが、戦争のリアルな恐怖の記憶が叩き込まれた歴史の大切さでした。

ドイツに旅行された時に、街を歩けばユダヤ人の慰霊碑や戦争や歴史に関する博物館がそこかしこに、テレビでは日頃からゴールデンタイムに戦争に関する番組がバンバン流れているのがドイツだったと。
今の日本が「はだしのゲン」が閲覧制限議論が起きたり、教科書から削除されたり、「火垂るの墓」は18年から地上波で放送されていないという事実を踏まえて、ご自分の子どもの頃と違ってきているのはメディアの責任だと書かれていました。
ちょっと長くなりますが、少しご紹介したいと思います。

「私が子どもだった1980年代は、教育現場にリアルで悲惨な戦争のコンテンツが溢れていた。(略)
ランドセルを入れる棚の上には原爆で焼けただれた裸の遺体の写真が並べられ(略)授業で戦争を扱う時は『皆さん平和の尊さをちゃんとわかっています!!』と説教モードになるのが定番。(略)
児童館にはさんざん読まれて表紙が外れかかっている「はだしのゲン」が全巻そろっていた。
スーパーマーケットに無料展示されているパネルが、原爆や戦争被害に関するおどろどろしい絵ばかり(略)夏が来るたびに、戦争のドラマや映画が放送された。「火垂るの墓」はテレビだけでなく、学校の映画上映会でもよくかかった。
「ちいちゃんのかげおくり」「ガラスのうさぎ」は図書館のお勧めの定番だった。エンタメ性の高い児童書の多くに戦争に関するエピソードがサラッと出てきた。
横浜で起きた米軍の事故の犠牲になった家族を描く「パパ、ママバイバイ」は本にもアニメ映画も有名だった。(略)
中学1年の時、入学して初めての遠足で埼玉の「丸木美術館」にでかけ、「原爆の図」を見た。
館内に張り巡らされた巨大な絵画の中では、原爆で焼けただれた人々が逃げ惑っていた。
鑑賞しているだけなのに皮膚がジリジリ痛くなり、口の中が熱く、喉が渇いた。
同級生の何人かが泣き出し、仲間に囲まれて慰められていた。(略)
20年後、私は丸の内でばったり、あの時号泣していた同級生Kちゃんと再会する。
あの遠足の思い出を話したらKちゃんは「ショックだったよねー」と懐かしそうに話した後「でも、見てよかったと思う」とつぶやいた。私もうなづいた。」

柚木さんの子どもの頃80年代は、もっと愚直に、必死の形相で大人たちが「戦争反対」を叫んでおり、ぼんやりと生きていても歴史を叩き込んでもらえた最後の世代だったのかもしれないと書かれていますが、正にその通りだと思います。
今は、虐殺、慰安婦問題などの加害事実や慰霊碑なども排除し、8兆円もの防衛費予算を計上し、攻撃型ドローンや宇宙軍事に力を注いでいます。
防衛省は戦争を回避するためにどうするかのみを考え、むしろ、柚木さんの子どもの頃のように戦争の悲惨さを、真実を国民一人一人に響くように訴えることを主眼とすべきではないでしょうか。

柚木さんは「高い理想を読者に進言するのであれば、まずは変わるべきはメディアでなのではないか。
もっと愚直に、声高に、戦争反対と叫んでもいいのではないか。例えば、テレビで戦争の悲惨さを伝えるコンテンツをもっと流してもいいのではないか」と提言され、
「普通に暮らしているだけなのに、人権や戦争について当り前のように正しい知識が入ってくるようになれば、別の景色が見えてくる。
歩いているだけで、この地でかって何が起きたのか、その真実を知ることができる。
歴史的なモニュメントや博物館がたくさんある。
家帰ってテレビをつければ、戦争に関する番組が流れている。
終戦の日じゃなくても、日々平和のために何ができるか考える瞬間がある。
そうすれば、政治の話題を避けず、それぞれのスタンスに関係なく、緊張せずに、この国について語り合うことができる気がする。
生活を楽しみ、ぼんやり生きながらも戦争を回避できる。そんな環境を作れるかどうかはメディアの頑張り次第ではないか。」

柚木さんご自身も「何よりも語られなかった歴史を学び、物語という形で届けたい。記憶の中の先生たちのように、愚直に「戦争反対」と叫びたい」と結んでいらっしゃいました。

8月15日の朝日新聞でしたか、記者の方が「あの頃のように大本営発表ではなく、きちんとした報道を届けたい」と自ら書いていましたが、であれば、今現実に起きている大本営発表に気が付き、今こそ声高に叫んでいただきたいと思います。

先日、出身ライターの櫻井剛さんの「昔は俺と同い年だった田中さんとの友情」という戦争特集のドラマスペシャルを拝見しました。
子どもたちが知らなかった戦争を、今の自分の年と同じ年に戦争を体験したおじさんに教えてもらうというドラマですが、子どもたちに悲惨なむごいものを見せないようにすることより、真実をみる目を育てることの大切さを語っていました。
ドラマでもドキュメンタリーでも本でも、あらゆる形できちんと加害行為も含めて戦争の悲惨さを知らせていくべきだと思います。
子どもの心を傷つけるという方もおいででしょうけれど、子どもの柔らかい心に響くからこそ、柚木さんたちのように「戦争反対」を心から叫べるのだと思います。

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ