新井一樹 著『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』(KADOKAWA)の出版記念対談イベントとして、「本屋 B&B」で開催された「新井一樹×政池洋佑 物語が生まれる現場から ~創作を楽しむ秘訣を大公開!~」。
こちらのブログでは、その模様の一部をご紹介。「物語を書いてみたい」という方や、「既に書いているけど今ちょっと悩み中」という方に特にチェックしていただきたい政池さん流・創作術を広報の齋藤がリポートいたします。
他の脚本家がやらないことを全部やる
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〇新井:創作をすることはパワーがいること。しかもそれを続けるって本当にすごいパワーがいると思う。そのパワーを今一番感じるかた、そして、この機会にいっぱいお話ししてみたい!ということで、シナリオ・センターの出身ライターでもある政池洋佑さんを今回ゲストとしてお招きしました。
政池さんは、前回『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』(日本実業出版社)を出版したときに、すぐ読んでくださって、しかも、「すごく良かったです!」という感想もくれて。嬉しかったです!
〇政池さん:シナリオ本マニアで、読んで読んで読みまくってるっていう感じですかね。
よく言ってるんですけど、昔から「才能がないことを認める才能」はあったんですよね。自分で才能がないことを分かってる。だからとにかく勉強しなきゃいけないなっていうのがすごいあって。
あと、脚本家を目指したときに決めたルールの1つが「気になる本は秒で買う」。月収5万ぐらいでしたけど、すべて買う。そのルールの延長線上でいまも多分、誰かがオススメしてる本は買って読む。あと、もう1つ。ちょっとかっこいいこと言うと、「他の脚本家の方がやらないことは全部やる」っていうルールもあって。
脚本家って結構シャイな人が多くて、飲み会もあんまり行く人いないし、SNSもやらないというイメージがあって。だからこそ、やろうと思って。逆にそこから仕事を増やしていこうと思ったりもして。
「自分には才能がない」っていう前提で走っているから、いろんなトライアンドエラーを重ねて、今に至るのかな、と。
〇新井:私の祖父であり、シナリオ・センター創設者の新井一は、「続けることが才能である」って言っています。
<シナリオ・ライターになれる人は、いつまでもいつまでも取りついていく、
忍耐というか、根気というか努力というか、そういうものを持ちつづけていることが、
むしろ、(才能という言葉を使いたければ)才能なのです。>
(新井一 著『シナリオの基礎技術』P9)
書き続けるにはやっぱり、本を読んだりとか、いろいろ吸収していくことが大切なんですよね。
〇政池さん:あと、スランプのときに読む3冊っていうのがあって、
▼ブレイク・スナイダー 著
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』(フィルムアート社)
▼カール・イグレシアス 著
『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』(フィルムアート社)
▼新井一樹 著
『プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方』(日本実業出版社)
――ですね。
〇新井:お!めっちゃ嬉しい!ありがとうございます。
〇政池さん:で 思ったのが、自分の“フェーズ”によって学ぶことって変わってくるような気がするんですよね。いきなり『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』を読むと、難しすぎるっていうか、ちょっとレベル高過ぎで、わけが分からないかもしれない。だから、自分のフェーズに合わせて、読む本も1歩ずつ進んで、で、ちょっとまた戻ってみたり、というのは結構大事だなと。
物語を作る上での政池さんの4大要素
「設定」「キャラ」「展開」「推進力」
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〇新井:物語を作っていく中で、特にこれは外せないみたいな、主なウェイトを占めているものって何ですか?
〇政池さん:僕の中での4大要素っていうのがあって。「設定」「キャラ」「展開」「推進力」。
まず「設定」。僕は設定を考えるのが好きなので、けっこう設定に乗りがちなんですけど。設定が面白くないと書けない、というか。もう設定からバッチリ面白くして、その中でやれることをやる、っていう戦い方をしてる感じかもしれない。
例えば、飲み会のときに何かお題を出してもらって、それに対する「設定」を考えて返す、みたいなことをやったりしますね。頭の体操にもなるし、意外とそこから面白いものが生まれることもあるので。
次に「キャラ」。『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』にも書いてある「リトマス法」に近いやり方なのかもしれないんですけど、キャラクターを立たせるためにやっていることがあって。それは「頭の中で、登場人物に質問を投げかけまくる」という方法。登場人物に質問を投げかけて、そのキャラなら何て答えるのか、試すような感じですね。
例えば「遠足に行くとき、300円で何を買いますか?」と聞いてみる。筋肉大好きな子だったら「プロテインを買う」って言うかもしれないし、お金大好きな子だったら「その300円を元手にお金を稼いで別のものを買う」って言うかもしれない。ケチな子だったら「使わない」っていう選択肢もあるし。意外とお金って性格が出るので。
こういうキャラが出るような質問を自分の中に50問ぐらい持っています。物語の内容に関係ない質問でもいい。30~50問くらい登場人物に聞いてみると、キャラを深堀りできると思うので、結構オススメです。
「展開」は、『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』(フィルムアート社)をベースにしていることが多いかもしれない。三幕構成みたいなことを作ってますね。
ボードにポスト・イットを貼って、細いと40枚ぐらい。クライマックスから考えてファーストシーン、第1プロットポイント、ミッドポイント、第2プロットポイント、みたいな感じで、とにかくポスト・イット貼りまくりますね。
でも最近の僕のテーマは「クライマックスのその先に」なんです。クライマックスとして最初に考えてたやつを超えたいっていうか、その先に行けたらいいなと。 最初に思いつくクライマックスなんて誰でも思いつくでしょうし。
〇新井: お話を聞いていて、政池さん脚本のドラマ『ミス・ターゲット』(テレビ朝日 他)がまさにそうだなって。「伝説の結婚詐欺師が婚活する物語」なんですけど、捕まるところで終わるのかなって思ったら、出所した後も描かれるっていう。
〇政池さん:あの展開は企画書の段階から決めてましたね。今のドラマってスピードをもっと早くしていかないといけないなと思っていて。だから、6話ぐらいまでをファーストシーズン、その後をセカンドシーズンみたいに捉えて書いてましたね。
というのは、韓国ドラマ『愛の不時着』を観て思ったんです。あの作品は前半と後半で全然展開が違う。前半の舞台は北朝鮮で、後半は韓国。そのスピード感って今っぽいな、そういうのをやりたいなって。
最後、「推進力」。視聴者が「この先も観たい!」と思うように物語を進めていくチカラ。『ミス・ターゲット』で言うと、結婚詐欺師が婚活するまではあくまで「設定」なんですけど、好きになった人が刑事の息子だ、となった瞬間、めちゃくちゃ推進力が発生するんじゃないかなと思って。
〇新井:確かに!観ていて、「この2人、どうなるの!? 」って思った。
〇政池さん:『秀吉、スタートアップ企業で働く』(テレビ愛知・テレビ東京 他 )のときも、タイムスリップものだから、いつかは元の時代へ戻るんだけど「秀吉、いつ戻るんだろう?」っていう推進力がある。
特に連続ドラマの場合は、続けて観てもらわないといけないので、これは意識していますね。
後から考えることも多いんです。設定は面白いんだけど、この先を観たいとは思わないな、ということもあったりするので。そんなときは、構成表やポスト・イットを見ながら、どうしたら先も観たい感じになるか、足していきますね。
イベントのアーカイブ動画が販売中です
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最後には質疑応答のコーナーも。参加者の方々からの「ミソ帳はどうやって書いていますか?」「取材はどういうやり方をしていますか?」「ドラマ、映画、漫画、小説、ラジオなど沢山ある中、限られた時間で観る作品をどう決めていますか?」「ショートドラマを書くときはどうしていますか?」といったご質問に、政池さんは丁寧に回答されていました。
「当日の模様、観たい!」という方は、イベントのアーカイブ動画が販売中(2025年3/23(日)まで)ですので是非。詳細はこちらをご確認ください↓
▼【アーカイブ動画視聴】新井一樹×政池洋佑 「物語が生まれる現場から 〜創作を楽しむ秘訣を大公開!〜」 『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』 (KADOKAWA)刊行記念
https://bbarchive240822a.peatix.com/
「物語を書いてみたい」という方も、「既に書いているけど今ちょっと悩み中」という方も、今回ご紹介した政池さんの創作術や新井の著書を参考にしていただき、是非ご自身の創作活動にお役立てください!
新井一樹 著書情報
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※こちらのブログも併せてご覧ください。
▼あなたのアイデアを、物語に仕上げるための『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』
※出版記念イベントとして開催した特別講義「頭ひとつ抜けた小説を書くためのシナリオ・センター式 創作術」の模様もご覧ください。
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