今回、出前授業「キッズシナリオ」を実施させていただいた横浜市立中和田小学校 。
日直さんに“お迎え”してもらい、教室に入るとこんな素敵なタイトルが↑
「総合的な学習の時間(総合)」を使い、3つの班に分かれ、動画を作ることになった5年生のみなさん。
しかも聞くところによるとどの班も、作りたい動画のイメージはもう決まっているとのこと。
素晴らしい!!
動画に対する熱い想い、受け取りました!
ただちょっと心配事があるようで。
「どういう内容にしたらいいのか。
つくり方がわからないから教えてほしいんです……」
もちろんです!
ということで、シナリオ・センターの田中が皆さんにお伝えした模様をレポート。
“自分たちの想いを動画でしっかり届ける方法”をご紹介いたします!
=今回の概要==============
・サービス名:「キッズシナリオ総合学習で動画をつくりたい!~5年生でオリジナル映画館を!~」(全1回)
・目的:総合発表会に向けた動画づくり
・対象:横浜市立中和田小学校さま
・時間:各約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
====================
「作りたいテーマ」を確認してみる。
みなさんは、
①いきもの 班
②宇宙 班
③物語 班
の3班に分かれていて、各班が作る動画の題材も決まっています。
まずは、動画づくりにおいて「題材」と同じくらい大切な「テーマ」を確認することにしました。なぜなら「題材」と「テーマ」は混同しやすいからです。
題材とは、動画を作るための材料のようなもの。
今回で言うと、「いきもの」「宇宙」「物語」がそれに当たります。
一方 テーマとは、その動画を通して作り手が伝えたいことを指します。
今回で言うと、題材が「いきもの」なら、「“命の大切さ”を観ている人に感じさせたい」といったことがテーマとなります。
題材とテーマ、それぞれの機能を混同して「この動画のテーマは“いきもの”です」となってしまうと、“いきもの”を通して何を描きたいのか、が分かりづらい動画になってしまう場合があります。
“いきもの”に対して感じる魅力は人それぞれです。
いきもの班のメンバー中には、
「いきものは、かわいい」と思う人もいるかもしれないし、
「いきものは、生態が不思議だ」と思う人もいるかもしれないし、
「いきものは、育て甲斐がある」と思う人もいるかもしれないからです。
班のメンバーみんなで共通の認識をもっていないと、動画の完成イメージもバラバラになってしまいます。
そこで、動画を通して何が描きたいのか、それぞれの班の指針ともなるテーマをみなさんに聞きました。
すると、パラパラと手が挙がります。
――ボクは「いきもの班」です。この動画を通して“自然の大切さ”を描きたいです!
――「宇宙班」です。この動画を通して“宇宙の壮大さ”を伝えたい……だよな?(→それぞれの席からお互いに頷き合う宇宙班のメンバー)
――私は「物語班」なんですけど、友情ドラマを通して……描きたいのは、“友情の大切さ”っていうことになってます!
田中は、心の中でこう思いました。
すごい。すごすぎる。
人に何かを伝えたいとき。
「手紙」で感謝の気持ちを伝えたり、
「作文」で自分の考えを伝えたり、
「メモ」で忘れてはいけないことを伝えたり、しますよね。
それと同じように、「動画」も何かを伝えるためのツールのひとつです。
で、動画で伝えるときに大切になるのが、伝えたいテーマは「具体的にひとことで(※)」ということ。
このことをまだお伝えしていないのに、どの班も具体的にひとことでテーマを決めている!すごすぎるじゃないか!!
※テーマについてはこちらの記事も↓
▼「もっと良い動画にしたい」を実現する為に@横浜市立青木小学校
こうなったらもう話は早い。
早速“次の一手”に行ってみよう!
「誰にとどけるか?」を具体的にしてみる。
お次は、この動画を誰に見せるのかを1人決めてみましょう。
例えば、山本君の弟(一年生)に見てほしいとか、
例えば、教頭先生に見てほしいとか、
例えば、お母さんに見てほしいとか。
複数人ではなく、この動画をたった1人に見せるとしたら、で決めてみます!
おや。
みなさん、「沢山の人にその動画を見せたいのに、なんで一人を決める必要があるの???」って顔。
でもでも、これはおすすめの方法でぜひやってみてほしいんです。
なぜなら、その動画を作るとき、表現に迷わなくなるから。
例えば、「素直になることの大切さ」をテーマにした動画をつくるとします。
ジャンルはラブストーリー。
素直になれない主人公の男の子が、好きな女の子に素直になって告白して、カップルになるというもの。
どうでしょう?
これを小学高学年が観たら、胸がキュンと高鳴るかもしれません。
でも。もし小学1年生が観たらどうでしょうか。
ポカーン。かもしれません。
小学1年生に観てもらうなら、些細なことで喧嘩しちゃった友達同士が素直になって謝ることができる、という青春もののほうが身近な出来事としてと心に響きやすいかもしれません。
つまり。
誰に観てもらうのか、「対象」を考えることで、どんな物語にするのか、内容が変わってくるんです。
さらに。
これは細かい表現にも影響します。
例えば、「戦争の悲惨さ」を伝える動画にテロップを入れるとします。
小学1年生に見せるとしたら。
「日本が終戦を迎えた1945年8月」よりも
「ぼくらがすんでいるにほん。いまから79ねんまえの8がつに、せんそうがおわりました。」のほうがいいのではないでしょうか。
誰に見せたいかを決めることで、その観客に合わせて言い方や、漢字やひらがなの使い方など、表現を選択することができるようになります。
このお話をすると、みなさん、「うん。納得。」といった表情で頷いてくれていました。
この後、「テーマ」や「誰に観せるか?」を考えることを軸にシナリオを書く練習をしました。
最後、「シナリオ書くのどうだった?」と聞いてみると、「うん。案外、いや、結構楽しいかも!」という声が。
よかった!その調子で、本番のシナリオも動画も楽しんで作ってくださいね!
動画づくりを通して育めるもの
シナリオ・センター創設者の新井一は、ドラマにおいて登場人物の「アクション」「リアクション」が人間を描く肝だ、と言っていました。
例えばAとBという人間がいたとします。
AはBにどんなアクションを投げかけるか。
対してBは、Aのアクションにどんなリアクションをするのか。
これは、AとBのキャラクター次第で、大きく変わる。
だからこそ、人物のキャラクターを決め、
そのキャラクターを踏まえたうえで「アクション」「リアクション」を考える。
これが、人間を描くための大いなる一歩である、と。
この「アクション」「リアクション」は、作り手と観客の間でも、同じことが言えると思うのです。
さきほど、動画は手紙や作文やメモと同じように、何かを伝えるためのツールだと言いました。
動画を“伝えるツール”として機能させるためには、作り手の「アクション」に対して、観客の「リアクション」を想像してみることも大切なのではないでしょうか。
「この動画を観て、観客に笑ってもらいたい。
じゃあ、どう撮ればいいだろう?」
こんなふうに動画をつくることは、人の気持ちを考えるきっかけとなり、
このきっかけによって“人の気持ちに対する想像力”もどんどん高まります。
だからでしょうか。
今年は特に、夏頃から「動画の作り方を教えてほしい!」という出前授業のご依頼を未だかつてないほどいただいております。ありがとうございます。
動画づくりを通して、子どもたちが育めるものが大いにあると思います。
クラスのみんなと協力しながら動画づくりに取り組む子どもたちの「アクション」を想像すると、一校一校、身が引き締まる思いになるという「リアクション」の田中でございました!
出前授業はオンラインでも可能です。東京・神奈川・埼玉だけでなく、全国どこでも実施可能ですのでお気軽にお問い合わせください。ご参考までに、これまで実施した出前授業の模様もご覧ください。
※おすすめ書籍
▼新井一樹 企画・構成・著 改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/執筆 川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)