応募総数1040作品の中から、大賞1作品、佳作2作品、審査員特別賞4作品が決定した「日テレ シナリオライターコンテスト2023」。
神谷克麻さん(シナリオ8週間講座修了)の『217円の絵』が大賞を、
田窪泉さん(元大阪校)『浮世に呵え』が佳作を、
畑雅文さん(研修科修了)『生霊戦隊モトカレンジャー』が審査員特別賞を受賞。
『月刊シナリオ教室』(2024年11月号)には受賞作のシナリオとともに受賞インタビュー&受賞の言葉を掲載。
ブログ用にもコメントをいただきました。こちらをご覧いただくと、「コンクールに応募するときは自分が好きなことや得意なジャンルを思いっきり書いてみるというのがいいのかも!」と作品を書くときのヒントになるのではないかと思います。
大賞『217円の絵』神谷克麻さん
「昔から考えていた題材を、自分の感覚をのせたセリフで」
*
=あらすじ=
高校3年生の春文 涼(17)が夜勤のコンビ二バイトでタッグを組んでいるのは、変わり者のおじさん・御所 明(44)。有名人のサインはなぜ価値があるのか、5円と500円はどっちが価値があるのか。そんな変な質問をいつも春文にぶつけてくる。ある日、春文は河川敷で絵を描いている御所を見かける。絵を描くことが好きだった春文はこれまで見下していた御所に少し興味をもつ。意を決して春文は御所に描いた絵を見せてもらうことに。想像を超えたキレイな絵に衝撃を受けた春文は、御所に弟子入りし、絵を教えてもらうことになる――。
〇神谷さん:編集プロダクションのライター時代。髙橋幹子さんが脚本を担当された回の『ちびまる子ちゃん』を観て素晴らしい!と思い、「このシナリオを書いた脚本家の髙橋幹子さんはすごい!」という記事を書きました。
その後、取材をさせていただく機会があり、お話をお聞きすると髙橋さんがシナリオ・センターに通って脚本家になられたことを知りました。それがキッカケで僕はシナリオ8週間講座に通うことに。
そのあとは独学で書き続けました。基本、作品は誰にも見せないのですが、今回これ以上どう直していいか分からなくなったことがあって、髙橋さんにシナリオを見ていただいたんです。何年もお会いしていなかったので、ダメもとでメールをお送りしたのですが、ホントにお優しい方でアドバイスしていただけました。
もともと今回の作品は「御所という売れない画家が人を殺して有名になる話を書きたい」というところからスタートしています。なので、最初は「殺す側」を主人公にしようと思っていたのですが、髙橋さんから「主人公は変化・成長していくことが大事」と。そこで、御所と対立する別の主人公として春文を立てて、彼の成長物語にしました。
他にも、髙橋さんからは「構成はハリウッド三幕法に沿って考えてみたらどうか」ということや、「シナリオ・センターの柏田道夫先生の本を読んでみては?」と教えていただきました。これ以降、書くのに詰まってしまったときはシナリオの技術に立ち返るようになりました。これまでずっと自分の思うままに書いてきましたが、やはり基礎的な技術は大切なんだなと実感しました。
御所のセリフは基本、自分が常々話している屁理屈です。受賞をキッカケに脚本を書いていることが家族にバレて、僕の作品を親が読みました。そうしたら「あんたがいつも言ってるただの屁理屈じゃん」って(笑)。でも考えてみると自分の感覚を登場人物のセリフにのせることができたので書きやすかったな、と。
それから、この題材は昔から考えていたことでした。「人」と「物」の関係でモヤモヤすることが多くて、「物自体の素晴らしさ」よりも、「それは誰が描いたのか・作ったのか」のほうが重視されがちなんじゃないかと。例えば、有名人の描いた絵は高く売れたりとか。
それにクリエイターは、狂ってるほど神格化されるようなこともある。最近だと、迷惑YouTuberや、殺人犯やシリアルキラーの絵がバズったり。自分はそういう人に興味を抱くので、人のことはあまりとやかく言えませんが、でもそれってどうなの?とずっと気になっていたんです。
自分の感覚をのせたセリフで、自分がずっと書きたかった題材の作品で、このような評価をしていただけて、本当にラッキーでした。
しかも、僕は面接がホント苦手なんですけど、最終審査まで進むと面談があって。自分ではギアを入れて話したつもりでしたが、「普段あんまり喋らないでしょ?」と言われてしまい(笑)。全然上手く話せなかったのに受賞できたので驚いたし、ありがたかったです。
これからも、人間の汚いところや、人とは違う変な価値観を持っている人物を書いていきたい。それが正しいと思ってもらえなくてもいいけど、そういう価値観もあるのかと感じてもらえたらいいなと思います。
佳作『浮世に呵え』田窪泉さん
「自分が読みたいものを、思いっきり楽しんで書いた作品」
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=あらすじ=
江戸時代後期。ひよっこ絵師の孫八(18)は頭を抱えていた。今、江戸では美人画ブーム。美人画を描けなければブレイクはない。しかし孫八は、がさつな姉にバカにされながら育ったため、良い女がわからず、美人画が苦手だった。ある日、孫八は買ったばかりの錦絵を大通りでぶちまけ、困っているところを助けてくれた たおやかな美人に心奪われる。彼女にもう一度会えば完璧な美人画を描けると確信した孫八だったが、再び彼女に出会ったのは芝居小屋。彼女は女ではなく、上方出身で駆け出しの女方・中岡菊太郎(16)だった――。
〇田窪さん:歌川国芳の人生を浮世絵展で知ったのがキッカケで、この作品を書こうと思いました。
実力はありながらも不遇の時代を過ごしていた国芳は、ある時、中国の読みものの挿絵(武者絵)を描きブレイク。その後、娯楽を禁止された天保の改革で、お上を皮肉った錦絵を発売したことで民衆のヒーローになった、と。
とてもドラマチックだと思いました。でも、このまま国芳を主人公にしてしまうと創作の幅が狭まるので、彼をモデルにした架空の人物を主人公に据えることにしました。
何者でもなかった主人公が努力の末に成功をつかみ取り、大切な人のために活躍する話にできたら……いや、そんな話が読みたい!と思うと、どんどん筆が進みました。ですから、『浮世に呵え』は私が読みたいものを、ただただ思いっきり楽しんで書いた作品です。
リアリティを追求するために、当時の文化や風俗等、ガンガン調べました。知らないことを知れて、とても面白かったです。夜寝る前には孫八と菊太郎の恋の行方を思い浮かべながら寝付き、書きあげてしまったときは寂しくなったぐらいです。ちょっと怖いですね(笑)。
でも、それぐらい私はこの作品が大好きでして、とにかくたくさんの人に読んでもらいたいと思いました。確か、このコンテストの公式サイトに、2次審査を通過したらプロデューサーさんが必ず目を通すといった文言があったので、私の中では2次通過時点で満足でした。
それが、読んでいただけただけではなく、佳作受賞というメールが届いた時には、もう、この上ない喜びでした!日テレさん、ありがとうございました!
いま、「日テレライターズベース」のメンバーとして、ワークショップやアイデア出しに参加し、さまざまなプロデューサーさんとお話しさせていただいております。とても手厚く、丁寧に対応してくださり、貴重な経験をさせていただいているなぁと感じます。日テレさん、ありがとうございます!
私は、ライターズベースのメンバーの中で断トツ年上。体力も発想のフレッシュさも劣っているだろう私にこんな機会をいただけるなんて、それだけで夢みたいです。いつどうなるかわからないので、悔いが残らないように、とにかく楽しむ!をモットーに。願わくは、自分のアイデアが採用された作品がオンエアされるべく、日夜励んでおります。
私の周りは才能あふれる方々ばかりなので、劣等感に苛まれることもしょっちゅうです。でも自分が納得できるものしか書き進めることができないので、私にしか書けないことを突き詰めて、行けるところまで行ってみようと思います。
審査員特別賞『生霊戦隊モトカレンジャー』畑雅文さん
「なんだかんだ自分は恋愛というジャンルに縁があるのかもしれません」
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=あらすじ=
恋愛から遠ざかっていた五藤美波(30)は、カフェの店員である白浜 卓(25)から好意を寄せられ、連絡先を書いたメモを渡される。悩んだ末、美波は「これでいいよ」とそのメモをゴミ箱に捨てる。すると「よくねーよ」という声を皮切りに、次から次へと歴代の元カレが5人出現。赤・青・緑・黄・黒を基調とした服を着ており、まるで戦隊ヒーローのよう。話すうちに、どうやら彼らは美波に対して特別な思いを持ち続けているために出てきた“生霊”ではないか、美波に新しい彼氏ができて幸せになってもらうことが“成仏”の条件なのでは、という結論に至り――。
〇畑さん:今回の作品は、単純にタイトルを先に思いつき、そこから膨らませて仕上げた次第です。ジャンルとしてはラブコメディという位置づけになるのだと思います。
実は、数年前にTOKYO FMで1年間、青春恋愛を題材にしたラジオドラマの脚本を書いていました。秋元康さん監修のもと、約3分ほどのストーリーを毎週全51話担当しました。シナリオ・センターでは取り上げてもらえませんでしたが(笑)。特段興味があるわけではなかった恋愛ドラマの素養がそこで鍛えられ、その経験が本作の執筆にも役立ったのだと感じています。
また、漫画を原作とした2.5次元舞台の脚本をいくつか書かせていただいており、その中で『ヲタクに恋は難しい』というラブコメディを担当したことも作用してる気がします。なんだかんだ、自分は恋愛というジャンルに縁があるのかもしれません。
思い返せば、好きな番組は恋愛リアリティーショーだったりします。その類の番組は、ある程度の台本や演出的な指示、つまりヤラセがあるなんてことも言われていますが、僕はそれもエンタメとして楽しんでいるので構いません。
出演者の本音や素の部分など、リアルだと受け取る箇所も圧倒的に多く、フィクションの比率が含まれても、せいぜい半々だと考えます。それこそ、能を大成させた観阿弥の子・世阿弥によって記された、全ての芸能に通じる理論書『風姿花伝』に載っている虚実皮膜論を体現している印象です。
虚実皮膜論は、「現実離れし過ぎても観客は冷めるし、事実だけを再現しても退屈なので、その中間こそが面白い」といった考えですが、恋愛リアリティーショーはまさにその通りで、「嘘」と「誠」が擦れ合ってるように思います。
自分は、バラエティ番組が作り出す「嘘の設定から演者の誠が繰り出されて、それらが掛け合う面白さ」が大好きで、同時にライバルでもあります。そういった番組を見ているときと同レベルか、それ以上の感動や興奮を脚本として作り上げ、心に残り続ける作品を手掛けようと決めております。
だったらバラエティ番組を見てれば済むというご意見もございましょうが、それを言っちゃあおしまいよ……と寅さんが嘆きます。無粋な揚げ足取りはお控えください。
脚本という創作活動でその領域に達した表現をしたとき、きっとバラエティ番組の面白さを凌駕するのではないかと存じます。その地点に向かってひた走るのが目下のスタンスです。皆さんの魂が喜ぶ波を巻き起こすべく、思い切り自由に楽しんでシナリオライトに勤しむので、ぜひ心を踊らせながら応援してください!
いろいろなコンクールでシナリオ・センター在籍生や出身生の方々が受賞されています!
こちらの記事も併せてご覧ください。
▼TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2023
- シナリオは、だれでもうまくなれます
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、シナリオ・センター創設者の新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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