シナリオ・センターでは、小学5年生~中学生向けの「考える部屋」というオンライン創作クラスがあります。
最初のステップである「基礎科クラス」は全24回(半年間)。
<※基礎科修了後は本科→研修科→作家集団とご進級が可能です。>
ちょうど半分となる12回目には「中間発表会」を開催するのですが、「スタートして3ヶ月でもうこんなに書けるようになったの!?」と驚くような作品が並びます。
そして24回目の12月3日(火)に開催の大発表会では、プロの声優の方に子どもたちの作品を朗読してもらいます。そんな彼らの「中間発表会」の様子をレポートします。
▼12/3(火)18:30開催「『キッズシナリオ 考える部屋』4期生の大発表会 ~全24回の集大成!~」。
>>詳細・お申込みはこちらから。
今回は、考える部屋基礎科4期生のメンバーのうち、2人の作品について紹介したいと思います。
というのは、特にこちらの2作品からは「惹き込まれる物語を作るためのポイント」を学べることができるからです。
「大人が書いたんじゃないの?」と驚かれるのではないかと思います!
これからご紹介する2つのポイントをご自身の創作に是非取り入れてみてください。
☆中間発表会の作品規定☆
・課題テーマ「料理」
・枚数はペラ(200字詰め原稿用紙)なら10枚/400字詰め原稿用紙なら5枚
・主要人物は3人くらいで
(3人だと、本音と建前が交錯して物語がより面白くなるため)
惹き込まれる物語を作るためのポイント①
トップシーンで主人公のキャラクターを魅力的に表現
Aさんの作品『マカロンとキャンディー』
=あらすじ=
中学2年生・家庭科部のココア(14)。友人のリンカ(13)が教室に入ってくる。「ココアちゃん!おかしの作り方教えて!」。「うん、うるさいから、落ち着いて」と答えるココアに、家庭科部の他の部員たちは困惑した表情を浮かべるがここあは気にしない。リンカは2週間後のバレンタインデーに向けて、野球部のリョウタ(14)に何かを渡したいと相談しに来たのだった。ココアは「バレンタインのプレゼントには意味があったりするから、例えばクッキーの意味は“友達でいよう”。マシュマロの意味は“あなたのことが嫌い”。でもそんなに私も覚えていないからな。今度私のうちで話す?」とリンカに提案する――。
――Aさんが、「うん、うるさいから、落ち着いて」というセリフを読み上げた途端、「考える部屋」担当の新井と、発表会の司会進行役を務めた講師のヒロくん(※考える部屋では先生とは呼びません)はにっこり。Zoomの画面に映っている他のメンバーも一斉に「うわー面白い!」という表情になりました。
発表後、『考える部屋』メンバーや、オーディエンスとして参加してくださった方々にも感想を聞いてみると、「うん、うるさいから、落ち着いて」というセリフがすごくいい!という感想が続出。それ以外にもこんな感想が↓
・「うん、うるさいから、落ち着いて」っていうセリフは、友達同士なら普通に使う現実的な言葉なんだけど、これをセリフとして使っているというのが、自分は見落としているな、スルーしちゃってるなって思った。こういう言葉を物語の中で書けているところがすごい。
・トップシーンでココアとリンカのキャラクターがすぐに分かるし想像できた。
・リンカが走ってくるときに「ココアが顔をしかめながらため息をつく」というト書があった。リンカのアクションに対するここあのリアクションによって、トップシーンで既に「2人の関係性」が分かるというところが素晴らしい。
――感想を受けてAさんは、「みんなが言ってくれたセリフやト書は“気を許している友人”という感じを出せたらなと思って書きました。あと、一番最初に、りんかが出てくるシーンは結構気をつかって書いたのでうまく伝わっていて良かったなと思います」とニコニコ。
「講評」として司会進行役のヒロくんは「トップシーンから、一気に物語に惹きこまれましたよね。それはやっぱり、主人公・ココアの「サバサバしているけど友達想い」っていうキャラクターがセリフやト書で魅力的に表現できているから。読者や視聴者を夢中にさせるには、最初の登場シーンからキャラをだしていくのが大切ということがこの作品からよく分かりますよね」とコメント。
Zoomの画面に映るみんなが大きく頷いていました!
※トツプシーンについてはこちらの記事や動画もご覧ください。
▼第3回トップシーン脚本大賞 2024/最初に浮かんだアイデアには もう一工夫
▼主人公の登場が印象的になる書き方/ヒント
惹き込まれる物語を作るためのポイント②
主人公に謎や秘密をもたせる
Bさんの作品『カップラーメンの真夜中』
=あらすじ=
深夜のコンビニ。蛍光灯の灯りが残りひとつのカップラーメンを照らしている。ユウ(20)が目をこすりながらそれに手を伸ばす。ホタル(15)が同じカップ麺に手を伸ばす。2人は目を合わせる。2人の手は商品をしっかり掴んでいる。論争している2人に、コンビニの店長・タケダが提案する。「なぜ食べたいのかそれぞれ説明してみては?」。最初にユウがカップラーメンを買いたい理由を話し出す――。
――発表中、他の人たちのZoomはミュートになっています。そのため、Bさん発表中も他のメンバーの声は聞こえないのですが、Zoomの画面には「えー!?この2人、どうなっちゃうの?」というように夢中で聞き入っている顔がズラリ。発表後、感想を聞いてみると……
・同じカップラーメンを2人が手に取る。この段階で「あ!」って惹きこまれる。で、そのうちの1人が少女だという事が分かって「なんで少女がこんな時間にいるんだろう?」って思う。次に、カップラーメンを買いたい理由を話すことになるんだけど、ホタルは「実はお腹空いてないのでお兄さんにあげます」って譲っちゃう。で、また「え!?なんで?」って思う。こんなふうに次々に不思議なことっていうか、謎が出てきて、続きが知りたくなる。この展開の仕方が面白いなと思った。
・ホタルちゃんがカップラーメンに手を伸ばした理由が、夜眠れなくて、気分転換にコンビニに入ったらちょうど人がいて、すごく人と話したくなって、それでわざと同じものを買うふりをした、というのがすごく良かった。で、それを聞いたユウくんが最後に「一緒に食べない?」って提案する流れがなんかエモかった。
・ユウくんの「(カップラーメンを)料理じゃないって言う人もいるけど、僕はおいしければ料理だと思う」というセリフ。すごくいいなと思った。こういうセリフってどうやったら出てくるのか教えてほしい。
――感想を受けてBさんは、「最初は、料理が苦手な主人公が夜食を作るためにカップラーメンを買おうとする話、っていうことで考えていました。でもイメージ的に、主人公は大学生でゲームをしていたら深夜になっちゃって、で、お腹が空いたからコンビニに行こうかなって感じになるかなって。ホタルちゃんは、15歳だから普通だったら補導されちゃうけど、ノリと勢いで表に出ちゃったみたいなことをイメージしました。深夜って結構 独特なテンションがあるから」とコメント。
講評として新井は「やっぱり登場人物に謎や秘密があると、“なんで?”ってすごい惹きこまれますよね。あと、すごくいなと思ったのが、ホタルが、実はお腹空いていないんです、って言ったときに“ユウと店長が顔を見合わせる”っていうト書があったと思うんだけど、このアクションがあることで、聞いているこちら側も劇中のユウと店長と同じタイミングで“なんで?”って考える間が取れるんですよね。物語が進んでいくのと同じテンポで、読者・視聴者も“なんで?”ってなれるということも、惹き込まれる物語を作るためのポイントなんだなって聞いていて思いました!」と皆さんにお伝えしました。
※「謎や秘密をもたせる」についてはこちらの記事もご覧ください。
▼映画『落下の解剖学』/ホームドラマをミステリーで引っ張る緻密な構造
▼ミステリー書きたい人“あるある”/ 3行ストーリー大賞2022より
12月3日には「4期生 大発表会」が開催!
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全ての発表が終わった直後から、メンバーの皆さんの意識はもう既に「大発表会」に。「大発表会は声優の中友子さんに作品を読んでもらえるからもっと頑張らなきゃ!」「今回よりももっと面白いものを書く!」「大発表会までの3ヶ月間また考える部屋で頑張る!」とやる気パワー炸裂です。
12月3日には、その大発表会が開催されます。今回のようにその模様はオーディエンスの方もご覧いただけます。
今回の中間発表会にご参加いただいた方には「登場シーンから主人公のキャラを出したり、謎や秘密をもたせると、これほどまでに物語の世界に惹き込まれるんだということを再認識しました」「主人公を徹底的に困らせたり、ミステリ―だったり、思いつかないストーリーで驚きました。こういう作品が書けたら人生楽しいなと思いました。自分もシナリオを習って半年ちょっとで、考える部屋メンバーと同じ期間なんですが、みんなすごいなと思いました」という感想をいただきました。
子どもたちの作品に触れることは、創作において大変な刺激になると思いますので是非ご参加ください!
▼12/3(火)18:30開催「『キッズシナリオ 考える部屋』4期生の大発表会 ~全24回の集大成!~」。
>>詳細・お申込みはこちらから。
※『考える部屋』中間発表会・大発表会のこれまでの模様はこちらで。
▼1期生 中間発表会