前回、シナリオ・センターの田中が出前授業「キッズシナリオ」を実施させていただいた、戸田市立笹目小学校6年2組のみなさん。その際(※)シナリオの技術をつかって、面白い映画をつくるポイントをお伝えしました。
※その模様はこちらをご覧ください。
▼クラスでホラー映画をつくりたい!@戸田市立笹目小学校
その後みなさんは、長編映画を撮る前に、練習も兼ねてまずは短編映画を撮影したとのこと!その上映会の模様を、アシスタントの藤吉がお届け。面白い映画をつくるコツを踏まえて映画づくりをした子どもたち。そんな子どもたちが、映画づくりを通じてどう成長を遂げたのかレポートします!
短編映画のテーマは『友情』
どんな友情が見られるのかな?とわくわくしながら会場に着いた田中と藤吉。
すると……どうやらみんなとっても緊張している様子。「もうだめだ〜!」「見たくない〜!」と声が聞こえてきます。けれど「頑張ったよ!」「もうなるようになる!」と励ます声も。映画撮影を経て、みんなの友情もさらに深まっているようです!
今回5つのチームに分かれて撮影したみなさん。いよいよ上映が始まります!
シナリオの技術が詰まった映画。『友情』がバッチリ伝わりました!
前回、テーマを伝えるために「アンチテーゼ」(※)から始める技術のお話をさせていただきました。
アンチテーゼとは、伝えたいこととは逆のシーンから始めることで、よりテーマをしっかりと伝える技術。例えば『友情』を伝えたいときに、最初から最後まで仲のいいシーンが続いても、友情は伝わりにくくなってしまいます。
そこで『アンチテーゼ』の出番!喧嘩をして仲直りをするなど、伝えたいことと逆のシーンから始めることで、見終わった時に『友情』が自然と伝わる作品になります。
みなさんの映画にはしっかり『アンチテーゼ』が使われていて、自然と友情が伝わりました!
それぞれのチームの作品をご紹介します!
※アンチテーゼについてはこちらの動画もご覧ください。
▼テーマが伝わる書き方
▼トップシーンで意識するべき書き方
★最初の作品のタイトルは『逃げろ!』
=あらすじ=
教室で喧嘩をしている2人。するといきなり何者かに追いかけられます!2人は一緒に逃げて———!学校の階段を駆け下り、廊下を振り返りながら走って走って——!!ラストは、なんとか逃げ切った2人。疲れて床に寝転がり、2人で笑い合い……。
◯田中・藤吉のコメント
思わず「逃げ切れてよかった〜!」と声が出たほど、とってもハラハラしました!また、カメラアングルにも工夫が。逃げる足元だけを映したり、ハラハラさせる工夫が詰まっていました!
喧嘩をしている2人が、何者かに追いかけられて、2人で助け合いながら逃げる——『アンチテーゼ』から始めたことで、自然と友情が伝わりました!
★2チーム目のタイトルは『手紙の返事』
=あらすじ=
女の子から「この手紙、◯◯くんに渡して」と手紙を渡された主人公。◯◯くんに手紙を渡すと「ちゅきちゅきラブリーちゃん♡」手紙はなんとラブレター!ここで男の子同士、取っ組み合いの喧嘩が始まって——!!最後は「こんなことやめようぜ!」とカラッと仲直り。そしてエンドロールには撮影のNGシーンも流れ、会場は笑いに包まれました!
◯田中・藤吉のコメント
手紙の内容や、アクションシーンのような喧嘩のシーン、エンドロールのNGシーンなど、エンターテイメント満載の作品でした!
ラブレターがきっかけで始まった喧嘩。喧嘩をしてもカラッと仲直りができる2人の様子から『友情』が自然と伝わります!きっと、もともと仲良しだったからすぐに仲直りできたんですね!喧嘩から仲直りするという『アンチテーゼ』の技術もバッチリです!
★3番目のチームのタイトルは『深まる喧嘩』
=あらすじ=
友達に驚かされて喧嘩になる2人。そこへとんでもなく強い相手が現れ、2人ともボロボロに負けてしまいます。2人は協力して強敵に立ち向かうことに!ドアに黒板消しを挟み強敵の頭上に落としたり、強敵の視界を奪うためにバケツを被せたり、床にまきびしを撒いたり……!2人で力を合わせ、強敵を倒します!
◯田中・藤吉のコメント
ラストで強敵を倒した2人を見て、拍手喝采です!2人が力を合わせて戦う姿はまさに『友情』そのもの!強敵との白熱の戦いに目が離せませんでした!
『協力して敵を倒す=友情』にもっていくために、最初に倒せそうもない敵を出すという『アンチテーゼ』が活きていました!
★4番目のチームのタイトルは『親友』
=あらすじ=
女の子同士が些細なことで喧嘩をしてしまいます。仲直りしたい…と思い互いに声をかけようとしても、先生に呼ばれてしまったり、チャイムが鳴ってしまったり…。すれ違う2人。最後は2人で正面から向かい合い、一緒に「ごめんね」と仲直り!
◯田中・藤吉のコメント
「エモい!!」田中と藤吉、思わず揃って声が出たほどです!すれ違う様子が切なくて「頑張れ!」と応援しながら見ていました。
また、A子ちゃんが「仲直りしたいな」次のシーンではB子ちゃんが「謝りたいな」というように、2人のシーンを交互に見せる技術『カットバック』を自然に取り入れていて驚きました!前回はお伝えしなかった技術なのにすごいです!
喧嘩から始まり最後に仲直り。『アンチテーゼ』を使いテーマを伝えています!
★5番目のチームのタイトルは『2人の日常』
=あらすじ=
遊びたい男の子と勉強したい男の子で喧嘩をしてしまいます。仲直りをした2人は絵を描いて遊ぶことに。しかし紙とえんぴつがなくて……。そこで男の子が「紙とえんぴつを!」と手を掲げると、なんと手の中に紙が!そしてえんぴつも!2人は絵を描くために外へ向かいます。
◯田中・藤吉のコメント
なんと、セリフのやりとりが全て字幕の映画でした!こだわりが出ています!
勉強好きな子が外に行く時もパソコンを持って教室を出たりと、キャラクターがしっかり出ていました!
紙とえんぴつを召喚する様子も、まずなにも持っていない手を撮影し、次にえんぴつを持った手を撮影、2つのカットを繋ぎ魔法のように見せたのも、撮影の工夫が伝わります!
喧嘩がメインのストーリーになるかと思いきや、仲直りした先まで描く———『アンチテーゼ』を取り入れつつの変化球が面白かったです!
大切なのは相手が何を思っているのかを考えること。
*
みなさんの作品、喧嘩などの『アンチテーゼ』から始まり、変わりたい、と変化していく人物が見事に描けていました。登場人物を通じて、相手を思いやる気持ちがどの作品からも滲み出ています!
どの作品もテーマが伝わりとっても素晴らしかったです!(↑写真:作品にコメントをする藤吉)
田中からみなさんへ、映画づくりを通じて感じてほしいことをお話ししました。
◯田中:みなさんお疲れさまでした!
「どんな映画を撮る?」とチームでたくさん話し合って、時には意見がぶつかったり…けれど、相手の言いたいことがわかった時、自分の言いたいことが伝わった時には安心して、より絆が深まったと思います。
〇皆さん:(うんうんと頷きながら聞いてくれています)
◯田中:映画の撮影の時にも「こんな時、どんなセリフを言うだろう?」「相手にこんなことされたら怒るよなぁ」とたくさん考えたと思います。これって…みんなの生活も一緒なんです!シナリオを日常でも活かしていけるんですよ!
◯皆さん:なるほど〜!!!
◯田中:よく「人を思いやりなさい」「人の気持ちになれ」っていうけど、どう頭を動かせばいいのか、よくわからないことってありますよね。今回みなさんがシナリオを書いたとき、映画を撮影したとき、登場人物のことを考えました。それがまさに人の気持ちになるということです!
それぞれの人の気持ちになって「こんなことしたらこの人は嫌かな〜」「こんなことしたらこの人は喜ぶかな〜」と、人のことを思いやっていたのです。それをみなさんはシナリオで自然とやっていたんですよ!
だからシナリオは日常でも活かしていけるんです。普段も、映画づくりは難しいかもしれないけど、よかったらシナリオを書いてみてくださいね!
――『アンチテーゼ』の技術を使って、みなさん面白い映画をつくってくれました!
それと同時に、人の気持ちを考えること、思いやることが映画を通じて育まれていく、そんな機会になったら。こういった想いでシナリオ・センターではキッズシナリオに取り組んでいます!
最後に、田中からみなさんへ、長編映画づくりに向けての応援メッセージをお届けしました!
〇田中:今日の映画、どの作品も素晴らしかったです!みんなシナリオの技術が身についていて、自然とテーマが伝わりました!長編映画を撮るときには、もっとみんなで意見を交換したり、考えることがたくさん出てくるけれど、みんななら大丈夫。みんなの力が詰まった長編映画を今から楽しみにしています!
――上映会の後、さっそく子どもたちは「長編のテーマは何にする?」「ジャンルはホラー?変える?」と話し始めていました!みなさんの作品が今からとても楽しみです!長編映画上映会後にはその様子もブログでお伝えしたいと思いますので、みなさまもどうぞ楽しみにしていてください!
※動画を作るときはこちらの書籍も参考にしてみてください↓
▼改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/企画・構成・著:新井一樹 /執筆:川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※いろいろな学校でキッズシナリオを実施中。事例をご紹介しておりますので、「うちの学校にも来てほしい!」ということでしたらご参考までにご覧ください。