物語を書いたり、創作をしたりするのが好きな子の力を伸ばすには……
シナリオ・センターの新井です。
KADOKAWAさんから2024年6月に『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』を上梓して、約半年。
「ウチの子、創作が好きなんですけど、どうしてあげればいいですか?」というお問合せを頂くことが多くなってきました。そこで、同じような想いを抱えている保護者の方に向けて、お子さんと一緒に楽しめる創作のコツをご紹介します。
現在ご自身で創作をされている小・中学生の方や、創作をされている大人の方にも参考にしてもらえる内容です。
誌上ワークショップという感じで、行ってみましょう!!
物語を書くのが好き! というのはすごい能力
そもそも物語を書くことが好きというのは、それだけでお子さんの素晴らしい能力といえます。だからこそ、無理なく伸ばしてあげたいところです。
今回は、大きく5つのポイントをご紹介します。
実際に考えてもらいたい問いも用意しているので、考えながら読み進めていただければと思います。
ポイント1:シンプルな1行にしてみる
物語を書こうとすると、頭の中でいろいろなアイデアが浮かんできます。特に創作が好きなお子さんの場合は、湯水の様にアイデアが湧いてくるはずです。
それは素晴らしいことですが、その分、アイデアが浮かびすぎでまとまらなくなってしまいます。
そこでまず挑戦してもらいたいのが、「シンプル1行」を作ることです。「シンプル1行」というのは、物語のなかで主人公のどんな姿を描きたいのかを、シンプルにまとめる方法です。そうすることで、頭に浮かんでいるたくさんのアイデアに翻弄されず、自分が書きたい物語の姿が見えてきます。
「主人公が△△しようとする姿」
Q:まずは主人公が何をしようとする姿を描きたいか、考えてみてください。
「シンプル1行」に、好きな作品をはめてみよう
いきなり「シンプル1行」を考えるのが難しい場合は、自分の好きな作品で試してみましょう。
A:主人公が、一人前の魔法使いになろうとする姿
A:主人公が、バスケットボールで日本一になろうとする姿
A:主人公が、海賊王になろうとする姿
などなど、難しく考えずにシンプルに考えてみるのがコツですよ。
▲@世田谷ふしぎの本プロジェクト2024 でも、子どもたちと一緒に実施しました
※関連記事。こちらも是非。
・一言で言うとどんな話なのか、も発表してもらいます↓
▼子どもたちが自分の上達を実感!/『考える部屋』3期生大発表会より
・1行を考えるときは「〇〇しようとする話」「〇〇になろうとする話」に↓
▼物語を書き出せない方・挫折してしまう方も書きたくなる!
ポイント2:どんな主人公の姿を描きたいか、想像してみよう
「シンプル1行」はできましたか?
「シンプル1行」は、「これだ!」という1つでもいいですが、いくつも考えておくと他の物語を書く時のヒントにもなりますので、思いつくままにたくさん考えてみるものオススメです。
「シンプル1行」が作れたら、今度は「主人公」に注目してみましょう。自分の好きな物語を「シンプル1行」にしてみると、主人公がやろうとしていることが、達成されるかどうか気になりますよね?
もしもその主人公が魅力的なら、なおさら物語の展開が気になります。
そこで!
次は主人公を考えてみます。
Q:「△△をしようとする主人公」が、どんな人なら物語がおもしろくなりそうでしょうか?
ヒントはこちら。
『主人公が、一人前の魔法使いになろうとする姿』を描くとして、魔法使いとしてエリートタイプの主人公の方が面白くなりそうか、落ちこぼれタイプなのか、魔法使いと気づいてないタイプなのか、さらにどんな性格や特徴のある主人公なのかを考えてみてください。
▲横浜市立小雀小学校5年生の皆さんに向けても実施しました!
キャラクターが変わると物語の展開も変わる
※関連記事。こちらも是非。
▼「小説 書くの恥ずかしい」を克服 @ジュンク堂書店池袋本店
主人公を考えるヒント
主人公や登場人物を考える場合、大切なのはまだ誰も会ったことのない人物を作者が理解しておくことです。以下のイラストをヒントにアイデアを膨らましてくださいね。
ポイント3:どんな邪魔が入るか考えてみよう
「シンプル1行」に加えて、主人公のイメージが湧いてきたら、次に考えたいのはどんな邪魔が入るか、です。
一人前の魔女になろうとする主人公が、何の苦労もなく一人前になってしまったら、物語として面白くありません。なので、どんな邪魔が入るとおもしろくなりそうか、考えてみてください。
ちょっと難しくいうと、「障害」といいます。
「障害」には、主人公を邪魔する出来事だったり、登場人物だったりします。
「シンプル1行」に「障害」の要素も加えてみましょう。
「主人公が~にこまりながらも、△△しようとする姿」
Q:主人公が「しようとすること」に対して、どんなことにこまるのか、いろいろなアイデアを考えてみましょう。
こまる要素が増えれば増えるほど、物語の全体が長くなります。
どれくらいの長さの物語にするかも考えて、どんなことにこまっていたら、おもしろくなりそうか考えてみてくださいね。
※「こまらせる」についてはこちらも是非。
▼脚本は誰でもいつでも始められる
ポイント4:頭のなかで映像を浮かべてみる
物語の全体像がだんだん見えてきたら、主人公を実際に動かしていきます。
その時のポイントは、
・どこに
・だれが
いるのか。そこで、
・何を
・どんなふうにしているのか
を考えます。
例えば主人公が、魔法使いになるための訓練をするとします。
・どこで訓練をしていたら、おもしろそうでしょうか?
・主人公と誰がいたら、おもしろそうでしょうか?
(ヒント:主人公がこまるような相手だとおもしろくなりますね)
・訓練は、どんな訓練だとおもしろそうでしょうか?
(ヒント:この訓練も、主人公がこまるようなものだとおもしろくなりそうですよね)
・その訓練をどんなふうに主人公がしていたら、おもしろそうでしょうか?
(ヒント:主人公のキャラクターが出るような訓練の仕方だとおもしろくなりそうですよね)
そして、主人公の置かれた状況と主人公のアクション・リアクションを考えていくと、おもしろいシーンが作れるようになります。
Q:こんなシーンがあったらおもしろそう、というシーンを上記にならって考えてみてください。
※「アクション・リアクション」についてはこちらも是非。
▼総合学習で動画をつくる~5年生でオリジナル映画館を!~/横浜市立中和田小学校
▼小学5・6年生も夢中になる物語作り/谷中小学校 放課後子供教室
ポイント5:小説の場合は、視点も考える
小説には、地の文とセリフの二つの要素でできています。
そして地の文には、3つの描写があります。
・風景描写
・状況描写
・心理描写
その描写をどの視点で書くのか考えます。
代表的なのは、一人称と三人称です。
一人称:ぼくは眠くなって、大きなあくびを一つした
三人称:修二は眠くなって、大きなあくびを一つした
人称というと、難しく感じるかもしれませんが、「一人称」は主人公の視点。「三人称」は語り手の視点と考えてください。人称に合わせて、描写の仕方が変わってきます。
ポイント4とポイント5ができれば、あなたはシーンを描くことができるようになります!!
ポイント6:シナリオは三つの要素で書く
シナリオの場合は、柱とト書とセリフの3つの要素でできています。
柱:場所と時間帯を書きます。
カメラをどこに置いてそのシーンを撮影するかを考えるのが、ポイントです。
ト書:状況や登場人物、その人物の動作などを書きます。
セリフ:登場人物のセリフを書きます。
小説との違いは、柱とト書とセリフを使って、「画に映るものだけ」で書くという点です。例えば、人物の心情は映りません。なので、イライラしているのであれば、【爪を噛んでいる】とか、【貧乏ゆすりをしている】という人物のアクション・リアクションを、ト書に書くことで表現します。
※「柱・ト書・セリフ」についてはこちらも是非。
▼シナリオの形式が身につくと面白い小説が書けるようになる/『考える部屋』2期生 中間発表会
▼子どもたちの映画作り。まずは脚本から/和歌山県市立野崎小学校
創作をしたいお子さんにオススメの3冊
お子さんと一緒に、創作を楽しむことをつかんでもらえたらと思います。
せっかくだから、もっと詳しくしりたい! という方は、このブログのもとにもなっている『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』をどうぞ! ほかにもお子さまと楽しめるおすすめの書籍をご紹介します。
『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』(新井一樹 KADOKAWA)
いまやったQ&A方式で考えながら進めていけるので、お子さんと一緒に楽しみながら読み進めることができます。物語のつくり方の全体像もつかめます。
『めんどくさがりなきみのための文章教室』(はやみね かおる 飛鳥新社)
児童文学作家のはやみねかおるさんが書かれている文章教室です。物語に特化しているわけではありませんが、物語仕立てで楽しく学ぶことができます。
『
いろいろな作品にもふれてください
創作をするうえで、自分で書くことの大切さはもちろん、いろいろな作品に触れることも大切です。
人の気持ちというのは、とても複雑で簡単には言い表せないものです。なので、子どものころは、自分の気持ちにふさわしい言葉や表現を生みだすことは難しいものです。だからこそ多くの作品にふれることで、自分の気持ちに近い表現を見つけることができます。
そんな風にいろいろな作品に触れるなかで、もっと自分の気持ちにふさわしい表現があるはずだ……という試行錯誤から表現欲がムクムク大きくなるはずです。その想いは、お子さんの創作のプラスになります。
お子さんと一緒に、創作を楽しんでください。
シナリオ・センターの新井でした。
大人ができるサポートはこちら
お子さんの創作意欲と創造力を伸ばすお手伝いとして、先ほどご紹介した新井の『シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』(KADOKAWA)を活用してもらえたらうれしいです。というのも、副題が『大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ』なのです。お子さんから大人の方まで、楽しく書き続けるための方法がつまっています!
さらに!
お子さん向けの半年間の講座『考える部屋』も、2025年6月に第5期が開講予定です!
塾でも作文教室でもない創作クラスにご参加してもらえたらと思います。
(日程の詳細は未定ですが、内容についてはこちらをご覧ください)
https://www.scenario.co.jp/project/kids_course/index.html