核廃絶
シナリオ・センター代表の小林です。昨日、退職なさった講師の方の訃報が届きました。
生徒でいらした時から50年近くシナリオ・センターに関わってくださいました。
90近くなっても若々しくおしゃれでだった彼女と55周年を一緒にお祝いしたかったのに・・・と。
身近な人が年々減っていきます。ともかくみんな元気でいて欲しい。それだけです。
昨日、オセロで日本被団協がノーベル平和賞を受賞され、92歳の田中熙巳さんがスピーチされました。
核兵器反対は常に叫んで来ていたものの、被爆者の実相をお聴きすると、なまやさしい気持ちで戦い続けられるものではないとしみじみ思いました。
それにしても、田中さんが繰り返した「原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府は全くしていないという事実をお知りいただきたいと思います」は、あまりにも重い言葉です。
苦しんだまま亡くなった方は決して過去ではなく、被爆者の方は今もなお苦しんでいらして、その実態を知らしめても知らしめても動かないお上に対して、どんなに腹立ち、どんなに絶望されてきたか、だからこその田中さんの心からの叫びだったと思うのです。
田中さんのスピーチの言葉は、どれひとつも聞き逃すことができない重い言葉でした。
田中さんは、私たちに求めます。被爆者でなくても感じるべきことを。
「想像してみてください。直ちに発射できる核弾頭が4000発もあるということを。
広島や長崎で起こったことの数百倍、数千倍の被害が直ちに現出することがあるということを。
みなさんがいつ被害者になってもおかしくない、あるいは加害者になるかもしれない、という状況がございます。
ですから、核兵器をなくしていくためにどうしたらいいか、世界中のみなさんで共に話し合い、求めていただきたいと思うのです。」
こんな被爆者の方々の痛切な想いが込められた言葉を、お上はいとも軽く受け流し、核兵器禁止条約への署名・批准は「極めて困難だ」と明言しました。来年3月の締約国会議へのオブザーバー参加についてもです。
この人たちは、感じないのでしょう。想像もできないのでしょう。
昨日終わったドラマではありませんが、「クズ!!」
ま、2000万ずつ選挙資金には配っても、授賞式行の交通費さえもださないお上ですから。
キャラクター
「シナリオ・センター式物語のつくり方」(新井一樹著・日本実業出版刊)に、『物語に登場人物が必要なのはなぜなのか』という項目がありました。
登場人物がいるのは当たり前だと思っている頭に、ちょっとガツンと来ました。
「どういうわけか、私たちには、人間が登場したら、その人が気になってしまう。という不思議な習性があるのです。
あまり面白くない映画や小説でも、なんだかんだ最後まで観たり読んだりしてしまうことがあります。
それは登場人物がどうなるのか気になるからです。」(シナリオ・センター式物語のつくり方らか)
シナリオ・センターでは、物語を運ぶのは登場人物、ストーリーありきではないといつもお話をしています。
ストーリーはパターンだからです。シンデレラストーリーは、童話「シンデレラ」に代表される物語の類型としてよく言われます。
シンデレラのように、有名ではない普通の女性が、短期間で(あるいは長い年月にわたる苦労の末)見違えるほどの成長と幸福を手にする成功物語をいうわけですが、ようは成功物語のパターンの一つです。
ですが、そこに登場する人物のキャラクターによって、物語の展開は全然変わってくるのです。
人間を描くのがドラマですから、観客・視聴者がその人間を追ってみたくなるような魅力が大事だということですね。
4月期の朝ドラ「虎に翼」もある意味シンデレラストーリーです。とても視聴率も、評判も良かったですね。
今よりも社会情勢が女性に対して厳しい時代の話しですが、今も状況が変わっていないということもあり、しっかりと対峙して頑張っていくちょっとドジな主人公の戦う姿に魅力を感じ、共感を持たれたのだと思います。
自主製作で制作費2600万低予算の「侍タイムスリッパ―」が評判を博し、「カメとめ」を超す勢いですが、この主人公のキャラクターも見事。
タイムスリップしたことを知って頭を切り替える軽さ、明るさに、侍としての捨てられない矜持とを持っているからこそ魅力的なのだと思います。
キャラクターづくりというのは、難しいです。
シナリオ・センターでは主人公の魅力づけは二面性と言いますが、憧れ性+共通性、キャラクターをどう作るかが、面白いドラマを創る鍵だと思うと、ついつい人間観察してしまいます。