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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

想像力

べらぼう~蔦重の栄華の夢噺~チラシから

逸材

シナリオ・センター代表の小林です。今日は阪神淡路大震災から30年、多くの方が心の中で祈ったのではないかと思います。
九州も大きな地震でしたが、ここのところ、あちらこちらで地震が起こっています。
日本列島を揺るがすような地震が襲おうとしているのではと不安になります。

この国の行政は、過去から学ぶことをよしとしないのか、旧態全のまま、新しくすることをあえて拒んでいるのかと思うほどです。
今何かあったら、能登半島みたいに1年間もほっぽりっぱなしにされ、断水を余儀なくされ、トイレもままならず体調を壊す方が続出し、倒壊したままの家々、道路に交通手段も奪われ、日本中がにっちもさっちもいかなくなるのでは心配です。
災害は、いつ来るかどこに来るかもわかりません。まさかのことは山ほどあるのに、なぜお上は動かないのでしょうか。
もし地震が起こったら、私は絶対首相官邸に避難しよう。日本で一番安全そうではないですか。(笑)
ドラマだと、「シン・ゴジラ」みたいに、対策本部に脱出する有能と思われる閣僚たちのヘリコプターが墜落してみんないなくなっちゃって、いつも無能だと思われて残された人がいい方向へ解決するんですよね・・・。
う~ん、ドラマみたいに実際にも隠れた逸材がいるといいですけれどね。

蔦重

正月明けから始まった大河ドラマ「べらぼう~蔦重の栄華の夢噺~」(NHK)が始まりました。

1,2話は、登場人物との出会い、紹介をするところですが、大河とか朝ドラは、子どもの頃から始まって、2,3週目に大人に本当の主人公とバトンタッチすることが多いのですが、この「べらぼう」では、最初から大人の蔦重です。
うまいと思いました。子どもの頃を描くのは、主人公のキャラクターがどのようにできたかを見せたいからです。
でも、子どもの頃から順序だって見せてくれなくても、今このシーンでキラキラしている主人公を見せることはできます。
森下さんは、江戸の華と呼ばれる火事を使って、蔦重のキャラクターをドーンと見せてくれました。

ドラマ誌2月号に「べらぼう~蔦重の栄華の夢噺~」の1・2話が掲載されています。
読まれてドラマを見るときっとなるほどと、うなられるでしょう。
SNSで騒いでいた女郎の裸の死体の描き方もわかります。
あそこまでリアルな女性の裸の死体を見せなくてもというご批判もあるようですが、吉原の状況を描くには、人間の業を描くには大事なシーンです。

幼馴染の花魁花の井に頼まれて蔦重は死にかかっている花魁朝顔に弁当を届けます。
ですが、蔦重が帰ると、朝顔は女郎のちどりに弁当をあげてしまうのです。
花魁朝顔はそういう人です。後輩の花の井や蔦重が子どもの頃に優しくしてくれた花魁朝顔のキャラクターがでてきます。
そして、朝顔の死を知らせに来るちどり。
弁当箱を返しながら「おらが食った」「(声尾を震わせ俯いて)おらが、おらが、飯食っちまったから・・・食ったから」自分が食べたことで朝顔が死んでしまったと嘆くわけですが、ちどりの置かれている状況、朝顔に対する想い、ちどりのキャラクターがきちっとでた見事なシーンでした。
着物をつかんで投げ込み寺へ駆けつける蔦重。そして、投げ込寺浄閑寺では。

〇浄閑寺
   死体を埋めるための穴が掘られている。
   その傍らで着物も剝ぎ取られ、枯れ木のような身体で打ち捨てられている朝顔。
   他の遺体も同じような有様。
蔦重「(見て)・・・」
   と、朝顔を持ってきた着物でくるみ直してやる。
   唐丸、手伝って
唐丸「裸で捨てられるの?」
蔦重「剥ぎとって売る奴がいやがんだよ、罰当たりが」
   と蔦重の手が止まる。

このシーンは、苦界にいても優しかった朝顔を描くことと、使い物にならなくなれば投げ捨てられる女郎たち、その上着物まで剥ぎ取る人間がいる、社会のド底辺をさりげなく感じさせます。
蔦重が活躍する吉原という舞台はこうしたところなのだと。
私も裸を見た時は、一瞬、演出的にお~っ!ここまでやるのかとは思いましたが、裸がなんという女優の裸だとか、裸が太っているとかではなく、こういう場所が吉原なのだということを知ってドラマを見るともっと面白いのに、そこの部分で止まってしまうのは残念だと思いました。
森下さんは、今回とても苦労されているとドラマ誌の作者ノートに書いていらっしゃいました。
脚本家が、どんなつもりでどのように書いているのか、わかって欲しいです。

これから、1年にわたって吉原を駆け回る蔦重の世界と合わせ鏡のように政治家田沼意次の入り政治の世界とのダブステージが繰り広げられます。
森下さんは大変だと思いますが、私は、視聴者のひとりとして楽しく拝見させていただきます。
それにしても、映像表現の技術がわかりやすくいっぱい詰まっているドラマです。森下さん、勉強になります。

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