一陽来復
シナリオ・センター代表の小林です。お休みに早稲田の穴八幡神社に行きました。
私の日記をお読みの方は思い出していただけるでしょうか、恒例の穴八幡の「一陽来復」をいただきにまいったのです。
「一陽来復」は12月31日と2月立春前日節分(今年は2月2日)の夜中の12時に今年の恵方にむけて1年間貼っておくと商売繁盛、金運がアップするというありがたいお札です。
なので、一陽来復をいただくのに長蛇の列というのは例年当たり前。
で、並ぶの大っ嫌いな私は、月曜日ならきっと空いてるだろうと出かけたら、あにはからんや、案外の混みよう。なんと50分近く並んでしまいました。
幸いに風もなく大寒なのに暖かな日和で、「幸先良き」と言い聞かせて、ただただ暇なので、かかと落とし運動を密かにしながら、4列縦隊で並んでいる他人様の足元を眺めていました。
おお、9割がたがスニーカー。老いも若きもスニーカーです。
私もスニーカー派で、今は何を着ていてもスニーカーでOKっていいよねと思っています。
他人様の足元をじーっと見ていたら、急にピンヒールを履いていた時代を思い出し・・・。
あの頃、ピンヒールが履けたのは、今より痩せていたからというのもあるけれど(笑)、平和だったからではと思っちゃいました。
高級ブランドに身を包み、転んだら危ない8センチピンヒールを女優でもないのにカッコつけて履いていられたのかもと・・・。
スニーカーは、ひょっとしたら不安定な時代を乗り切るための安全靴?
かっこいいから選んで履いているんだけどなぁ・・・、いやぁ、でも、災害や物価高などこのろくでもない暮らしをなにげなく自然に守っているのかも・・・?なんて、なんて。
とりとめもない思いに浸りながら、ひたすら穴八幡の長蛇の列に佇んで「一陽来福」を願っていた私でした。
人間を描く
今日は、月刊シナリオ教室のインタビューを受けてくださるということで出身ライターの櫻井剛さんがおいでくださいました。
メールなどではやりとりをさせていただいていましたが、お会いするのはなんと13年ぶり。
「日本テレビシナリオ登竜門大賞」を受賞した学生の頃から存じ上げているだけに、お子様がもう高校生とお聞きして大ショック。わ、わたし・・・後期高齢者になるわけだ・・・。(汗)いや(涙)
そう、確か「マルモのおきて」(2011年・愛菜ちゃんと福ちゃんと阿部サダヲさんのドラマ)で講義していただいて以来なのですね。
朝ドラ「ブギウギ」などご活躍ですが、私はギャラクシー賞を受賞した「あなたのブツがここに」(NHK)には本当に感動しました。「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」(NHK)もとてもよかったです。
「あなたのブツ」、「昔はおれと」もさりげなく事の本質に迫る、人として大切なことを描くドラマになっていて、これこそがドラマの真髄でないのかと私は思っています。
津田塾大で朝ドラ「虎に翼」の脚本を手掛けた吉田恵理香さんの講演の記事を読むと、櫻井さんとも通じる脚本家の佇まいが感じられました。
吉田さんは「高みを目指す女性は、とても矢面に立ちやすく、強い言葉を投げかけられやすいと思う。作品ではそんな女性への差別や偏見と闘い、納得できないと『はて?』と口にした主人公寅子を通して、『声をあげていく大切さ』や失敗しても間違ったりしても、我が道を突く進む『強さ』を描きたかった」と語られたそうです。
そして、「声を上げた人を否定しないだけでも、十分誰かの力になる」という言葉に、その通りと。
人は色々違う想いや考えを持っているのは当たり前のことなのに、ちょっと声をあげると叩かれる。平気で土足で踏みにじろうとする人の何と多いこと。
ドラマは、対立・葛藤を描きます。
こんな時代のドラマは声高ではなく、さりげなく人々の気持ちに寄り添い、大事なことを主人公に託するのがいいのかもしれません。
櫻井剛さんの「マルモのおきて」も「あなたのブツがここに」にも吉田恵理香さんの「恋せぬふたり」も「虎に翼」も大切なことを楽しくみせながらきちんと作家の想いを語っている傑作だと改めて思います。
社会派のドラマがいいと言っているわけではありません。コメディでもミステリーでも、人間を描くこと、これに尽きます。