忖度
シナリオ・センター代表の小林です。テレビをつけるとどこもかしこも中居騒動でもちきり。ニュースでフジテレビの社員説明会をみました。
社員の家族、子どもがいじめられたりしているって話もあり、つくづくイヤな世の中だなぁと思います。
フジテレビの社員の中に隠れている中心人物はいるのでしょうけれど、全く関知していない社員の方が多いのではないかと思います。
昨今、なんでも一束一絡げに見たり、一方的な情報だけで他人を弾劾する傾向が強まっている気がします。
それは、一番のメディアであったはずのテレビ局や新聞などの報道がろくでもなく大本営発表的になったからだと思います。
上の人にひたすら忖度しているようでは、ジャーナリストではありません。
下々の人を踏みつけにするのではなく、権力に立ち向かい、真実を報道するのがジャーナリストだと私は思っています。
民放連の報道指針には、
(1) 取材・報道の判断は、市民の知る権利に応えることを第一の基準とし、報道活動は、真実を伝える良心のみに依拠する。
(2) 報道活動は、公共性、公益性に基づいて、あらゆる権力の行使を監視し、社会悪を徹底的に追及する。
(3) 報道活動は、あらゆる圧力、干渉を排除する。
と書いてありますが、今は、お上への忖度ばかりが目につきます。
報道の在り方が今こそ問われるべきかと思います。
そして、個々が声をあげることは大事ですが、声を上げるということは他人を弾劾するためではなく、自分の名前を出してきちんと自分の想いや考えを出すことなのだということを認識して欲しいです。
篠原高志
出身ライターの篠原高志さんが、昨年のクリスマス12月25日にご逝去されました。享年60歳。まだまだなのにです。
篠原さんとは、もう何年のお付き合いだったでしょうか。
確か2000年に「アドベンチャー探偵の事件簿」でデビューされているので、その数年前からシナリオ・センターで学ばれて、30年近いお付き合いだったのでしょうか。
シナリオ・センターで受講されていた時は、旅行会社の国内旅行企画担当で、大好きな映画の「ゴジラツアー」とかユニークな企画を立てるアイデアマンでした。
デビュー作も旅行会社の社員ならではの発想から生まれたものでした。
デビュー後は、決して売れっ子作家とはいえませんが、一つ一つの作品に丹念に向かう性格で、しっかりキャラクターを創る上げていくのが得意でした。
真摯に作品と向き合うタイプなので、時々ドツボにはまって落ち込んだりすると、愚痴を言いに(笑)遊びに来てくれました。
彼の作法を聞いたり、時にアドバイスをしたりと長々とおしゃべりを楽しんだものです。
テレビや小説なども書かれていますが、映画を5本描かれました。
「旅の贈りもの1:11発」(06)、「ふみ子の海」(07)、「旅の贈りもの 明日へ」(12)、「うさぎ追いし 山極勝三郎物語」(16)、「大綱引きの恋」(21)
最後の「大綱引きの恋」はあの佐々部清監督の遺作でもあります。
「大綱引き」は鹿児島薩摩川内町で行っている420年も続いている行事です。
この作品にかける篠原さんにインタビューしたときの一部です。
『対立する親子を描くにあたって、「照れ」と「意地」です。特に一般の男の親子の間には「照れ」と「意地」があると思います。つまり、セリフや動きをストレートにしない。見ていてもどかしいという描き方をしようと。有馬親子について、幼馴染みのテンコにセリフで「ああ、面倒くさい」を連呼させているのは、有馬親子の「照れ」と「意地」の関係を外部の意見として表したつもりです。』
『実際に観た、1500名対1500名の「川内大綱引」本番の大迫力は、絶対クライマックスにしたいと思いました。それだけではなく、取材の成果によって(略)、10日前からの上方・下方それぞれの「本部設営」とそこでの毎晩の親睦と作戦会議、当日早朝からの自衛隊や大勢の市民たちによる綱練り(大綱を作る)「ダン木祭」という神事、川内の人達の「大綱引」への人生を賭けているかのような強い思いを丁寧に描くという方針を決めました。』
彼は、シナリオを描く時、必ずきちんと取材をしました。ネット検索で終わらせない、その現場に行ってこそ見えるものがある、感じるものを大切にされていました。
闘病しながら、治ったら時代劇を描きたいとおっしゃっていたそうです。
天国で、佐々部監督と次回作を練っていることでしょう。合掌。