開講
シナリオ・センター代表の小林です。今日はシナリオ作家養成講座だけでゼミナールがないので、静かな感じです。明日は153期シナリオ作家養成講座が開講されるので、嵐の前の静けさか。(笑)
新たな年に、新しいことを始めるって、きっといいことがあると私は信じています。
シナリオ・センターは今年55周年という記念すべき年なので、例年よりイベントや特典も多くありますので、これをチャンスにたくさんおいでくださると嬉しいのですが。
55年もやっているとマンネリのように思われがちですが、常に色々なことにチャレンジをし続けていた創設者新井一の精神を継承しているシナリオ・センターです。
映像は、同じテーマでもどう見せるかが勝負ですから、技術の伝え方も同じ、その時代に合わせて見せ方・伝え方は変わります。
常によりわかりやすくより体得しやすい教え方を考えています。楽しみにしてくださいね。
何度も言いますが55周年ということもあり、開講のオリエンテーションもオープンにしています。
私は、この講座での学び方をしっかりとお話しをしますので、初めての方はもちろんご経験のある方も、シナリオ・センターの学びに納得され、創作の楽しみが倍増されることかと思います。
オリエンテーションをお聴きになってからご入学をお決めいただいてもOKですので、まずは始めてください。
始めなければなにごとも始まりませんから。
55周年の今年はイベントも多く、楽しいこといっぱいですのでおススメです。
阿修羅のごとく
見せ方、伝え方と言えば、向田邦子さんのドラマ「阿修羅のごとく」を是枝裕和監督が配信でリメイクして話題になっています。
1979年放送された向田邦子さん自身の脚本「阿修羅のごとく」は、脚本はもちろんのこと、演出も(NHKの和田勉さん)、出演者の加藤治子さん、八千草薫さん、いしだあゆみさん、風吹ジュンさん、佐分利信さん、緒形拳さん、宇崎竜童さん、そしてドラマを否が応でも盛り上げたテーマ曲トルコ軍楽「ジュッディン・デデン」等々すべてが素晴らしく、衝撃的でした。
それをリメイクするというのはずいぶん勇気のいることではと思いました。
あのドラマに心酔したものにとっては、俳優さんの宮沢りえさん、尾野真千子さん、蒼井優さん、広瀬すずさんの演じる姿をみながら、やはりオリジナルの方々のイメージと重ねてしまいました。
とはいえ、細部まで覚えているわけではないのですが、デジャブみたいに感じるシーンもあり、前は?と思う部分もありですが、見事に面白く、新しい「阿修羅のごとく」が生まれていました。
父親の不倫のことを調べた三女滝子が姉妹に電話しながら曇ったガラスに、「父」と書く一番大事な冒頭シーンはさすがに変わっていませんでしたが、長女の綱子(加藤治子)の不倫中に乗り込む次女の巻子(八千草薫)が愛人と食べるはずのうな重を投げつけるというオリジナルのシーンを尾野真千子さんの巻子は、むしゃむしゃ綱子と一緒に食べます。
一瞬、あれっと思ったものの、現代だからこその是枝監督のあえての演出だったそうです。
是枝監督の「阿修羅のごとく」はなかなか見ごたえがありましたが、失礼ながら、それはなんと言っても向田さんが創られたキャラクターのすごさから生まれたものだと思いました。
是枝監督が脚色はされていても、登場人物のキャラクターがしっかりしているので、向田ワールドはぶれない、決して変なところへは行きません。
昭和の話ですから、現代のモラルとは違うものがあるし、ジェンダー観など当時とは大きく変わってきている昨今だけに、是枝監督は「男に引きずられない意志の強い女性にしようと思いました」と話していましたが、向田さんの描いた4姉妹とお母さんは、今以上に強い意志を持った女性たちだと私は思っています。
向田邦子さんは、今も生き続けているのですね。
リメイク、脚色は、オリジナルや原作のどこを切り口にするか、どこを誰を中心に見せるかで全く違うものに変っていきます。
オリジナルを読み込みながら自分のものにする・・・脚本家の力の魅せどころだと思います。