長野県上田市立神川小学校6年生の担任の先生から、こんなお問い合せのお電話をいただきました。
「総合的な学習の時間(総合)で地域のPR動画を作るため、
取材をするのですが、できれば動画の授業を受けた上で
取材をしたいと思っています。
なぜなら、先に動画作成についてお聞きしておけば、
取材のときに押さえておくべきことも分かると思いまして。
実は以前、動画づくりを行ったことがあるのですが、
ちゃんと本格的に、動画の作成方法を教えていただきたいです」
先生によると、木彫り工房へ取材することは既に決まっているとのこと。
わたくし田中、
「ぜひとも、そのPR動画をよりよいPR動画にしていただきたい!」
ということで、今回はオンライン(Zoom)で出前授業「キッズシナリオ」を実施させていただきました。
こちらのブログでは当日お伝えした「自分たちならではの“表現”が見つかる動画づくりのコツ」をご紹介します。
=今回の概要==============
・サービス名:「取材前に動画づくりの仕方をレクチャーしてほしい」
・目的:総合の取り組み 動画づくり
・対象:長野県上田市立神川小学校さま(6年生)
・時間:約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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「地元の素晴らしさをPRしたい!」
木彫り工房への取材は決まっているものの、その他、どんな場所やお店をPRするかはまだこれから。
でも、みんなの心には
「魅力っぷりの地元の素晴らしさを、動画を通して伝えたい!」
という熱い想いがあります。
動画は、手紙を書くこと、メモを書くこと、作文を書くことと同じように、“何かを伝えるための手段”です。
そして、“伝えたい”を“伝わる”ように作るためにはまず「テーマ」を設定することが大切になります。
テーマとは「動画を通してみんなが伝えたいこと」です。
例えば「友情の大切さ」みたいにシンプルに考えるのですが、みんなはもうテーマをちゃんと設定できていますよね。
それは「地元の素晴らしさ」です。
このテーマをもとに、動画を作っていくわけなのですが、
その前にちょっと練習を。
子どもたちが知っている地元のお店や施設を例にして、イメージトレーニングをしてもらいます。
題して「身近なお店の紹介をしてみよう!」。
この実習をするにあたって、田中は考えました。
みんなの地元には、どんなお店があるんだろう。
みんなは長野県上田市に住んでいる。
上田市といえば、お蕎麦!
「行きつけのお蕎麦屋さんとかあるんじゃない?」
「うーん……」
みんなが首を傾げているのがZoom越しから見えます。
「じゃあ施設とかは?上田市だから上田城とか!」
「行ったことはあるけど……」
またもや首を傾げる皆さん。
「みんながよく行く“馴染みのお店”ってどこだろう?」
すると、声を揃えて、
「イオン!!!」
なんと。
気づきませんでした。
そうか、イオンだったのか!!!
ということで、みんなの馴染みのお店であるショッピングセンター「イオン」を題材に、どんなPRをするか、考えてみました。
まずは、このお店の“良いところ”を挙げてもらいます。
「品揃えの豊富さ!」
「商品のある場所が分かりやすい!」
「広くて、快適に買い物ができる!」
「子どもからお年寄りまで行きやすい!」
「セルフレジがあったり、店員さんのレジがあったり、選べる!」
「楽しい!」
次々とPRしたい部分が出てきます。
ただこんなときは、ひとつ注意。
お店の魅力がこれだけたくさんあると、その中のどこを、どんなふうにPRすればいいか迷ってしまいますよね?
そんなときは「この動画は誰に観せるか」を考えます。
みんなに聞いてみると、
「地元の人たちに観てほしいです!」
「学校の人たちに観てほしいです!」
たしかに。
せっかく作ったPR動画。
できるだけ沢山の人に観てもらいたいですよね。
でも、動画を作るときは、観てもらいたい人「1人」を具体的にイメージすることがコツなのです。
「観てもらいたい人を1人、設定してみよう!誰にする?」
「う~ん」とみんな、空(くう)を見つめております。
実習&発表を通して「誰に観てもらうかで内容が変わる」を実感!
「なんで1人に絞るんだろう?」
と思った生徒さんもいたのではないでしょうか。
これにはちゃんと理由があるのです。
なぜ1人に絞るのかというと、観てもらう“相手”によって、内容も見せ方も変わってくるからなのです。
例えば、遊園地をPRするとしたら、アトラクションの爽快さ、園内の清潔さ、レストランや食べ歩きフードのおいしさ、等々、いろいろな魅力が挙げられますよね。
でも、「誰に観てもらうか」で内容は変わります。
例えば。
小学生の高学年に観てもらうなら、アトラクションの爽快さ。
ジェットコースターの種類やその魅力を伝えることで、「行ってみたい!」と思うかもしれませんよね。
でも、赤ちゃん連れのお父さんやお母さんだったらどうでしょう。
綺麗なベンチや遊具、ベビールームもある綺麗で広いトイレがある、といった園内の清潔さを伝えたほうが「行ってみたい!」と思うかもしれません。
こんなふうに、「誰に観てもらうか」で“内容”が変わってくるわけですが、さらにもうひとつ。
“見せ方”も変わってきます。
例えば、小学生の高学年に観てもらうなら。
みんなと同じ年齢なので、「です・ます調」で言うよりかは友達に話しかけるように「このジェットコースターのこんなところがオススメだよー!」と少し砕けた語り口のほうが、親近感を感じてもらえるかもしれませんよね。
また、動画にテロップを入れる場合。
自分たちより年下の、例えば1年生に観てもらうなら、テロップの文字は、漢字よりも平仮名を使ったほうが伝わりますよね。
こういったことを踏まえた上で、先ほどの実習です。
ショッピングセンター「イオン」を題材に、
①「テーマは何にするか」
②「誰に観てもらうか」
③「どんな内容にするか」
④「どんな見せ方にするか」
を考えてもらいました。
そして、どんな映像を撮るか、「絵コンテ」(※)も描いてもらいました。
“絵”を描くことで上記の4点をより意識することができます。
※絵コンテについてはこちらの記事を是非。
▼『小学校で子どもたちがSDGsの動画を作るポイント@十日市場小学校』
▼『小学生が町の魅力をPR/動画を作る時の4つのポイント@横浜市立汐入小学校』
最後に、発表してもらいました。
その中で、こんなふうに考えてくれた生徒さんがいました。
テーマは「品揃えの多さ」で、「自分のお母さんに観てもらう」という設定。
「本当に品揃えがいいのかなー?って思いながら私がイオンに入っていきます。
商品を見ていくうちに、本当に品揃えがいいことが分かって(=陳列棚を映す)、家に帰ります。
で、本当に品揃えがいいんだよ!とお母さんに伝えるというPR動画です」
こう説明してくれながら絵コンテをZoom越しに見せてくれました。
とっても上手!
この後、同じく「品揃えの多さ」というテーマで発表してくれた生徒さんもいたのですが、「誰に観てもらうか」が異なっていたので、内容は全く違っていました。
この2人の違いを受けて、みんなには
「“誰に観てもらうか”が違うと、本当に内容や見せ方が変わるんだ!」
とさらに深く実感してもらうことができました!
今回ご紹介したことを取材の際にも是非お役立てください。
今回はあくまでも練習で考えてもらいましたが、前述した発表の模様でもお分かりいただけたように、「自分ならではの“表現”を見つける方法」を知ってもらえたのではないかな、と思います。
そして、このコツをおさえたことで自分たちがどんな動画を作りたいのか、が明確になるので、取材をするときも、闇雲に質問するのではなく、動画に必要な内容に絞って質問したり、深堀りすることができます。
授業後、担任の先生からメールをいただき、みんなから
「絵コンテについて初めて聞いたけど、分かりやすく教えてもらえてよかった!」
「イオンを題材にして練習したので、今度取材に行く木彫り工房の動画も早く作ってみたい!」
といった前向きな感想があったことを教えていただきました。
ありがとうございます、とても嬉しいです!!!
ぜひ、地元の素晴らしさを伝えるPR動画、楽しみながら撮影してくださいね。
完成を楽しみにしてます!
※動画を作るときはこちらの書籍も参考にしてみてください↓
▼改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/企画・構成・著:新井一樹 /執筆:川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)
※いろいろな学校でキッズシナリオを実施中。事例をご紹介しておりますので、「うちの学校にも来てほしい!」ということでしたらご参考までにご覧ください。
▼コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ