第36回フジテレビヤングシナリオ大賞の受賞記者会見が3月に開催。なお、同賞の会見は例年11月開催ですが、今回は審査上の関係でこのタイミングになったとのこと。
応募総数1585篇(前回1679篇)。最年少応募者13歳(前回13歳)。最年長応募者75歳(前回74歳)。大賞1篇 佳作1篇が選出され、そのうち、三嶽咲さん(元本科)の『天才クイズアカデミー』が佳作を受賞。
次回 第37回フジテレビヤングシナリオ大賞は、3月中旬頃より募集開始予定。締切は5/15(木)23時59分まで。発表は2025年冬頃予定。
応募される方は、今回ご紹介する審査委員長 宮﨑暖さん(フジテレビ ドラマ制作部 プロデューサー)の講評を特に参考にしてください。宮﨑さんのコメントから、審査員は応募作品および応募者のどんなところに可能性を感じ、受賞者を選出するのか、ということがよく分かるのではないかと思います。
まずは三嶽さんの受賞コメントから、広報の齋藤がリポートいたします。
佳作受賞 三嶽咲さん『天才クイズアカデミー』
=あらすじ==
高校生クイズ・ザ・チャンピン鹿児島県地区大会決勝。舞台に立つのは香澄、有馬、聡の三人。遡ること数ヶ月前。共学になった男子校・セザール学園入学式から物語は始まる。有名女子プロレスラーの母親・静と服装で喧嘩したせいで新入生代表挨拶に遅刻してしまう香澄。クラスの自己紹介で、香澄は中学時代から「皇帝」と呼ばれる有馬と出会う。「あなたを越えるためにここに来た」と宣言するが、有馬には「くだらない」と一蹴される。クイズ研究会に入部希望を出す香澄だが、有馬とその無二の親友・聡は部屋にも来ず、2人だけの孤高の世界で互いの才能を伸ばし合っており、入る隙もない。ただ、全国大会は三人一組が条件であるが故に、有馬と聡は彼女を大会の仲間に迎え、三人で特訓の日々が始まることになる――。
〇三嶽咲さん:昨日、受賞の言葉を考えるにあたって「なんで書き続けるのか」と。それで「雲外蒼天」という、雲の上の青空は美しい、努力した先にある青空は美しい、といった意味の四字熟語を思い出しました。
私は海外でも活躍できるような作品を、テレビドラマや映画で作っていきたいと思っています。やっぱり今のストーリーテラーみたいなものでいうと、日本の漫画家さんたちがトップをひた走っていらっしゃるんじゃないかなと思いますし、テレビドラマでいうと韓国に少し差がついてしまっているところはあるかなと思うんですけれど、そこに“追いつけ追い越せ”の精神で頑張っていった先にある世界をたぶん見たくて、書き続けているのだろうなと思います。
今回、賞をいただいたことでちょっとですけれど前に進めた気がしていて、そこが本当に嬉しいなというふうに思っています。これからも、たぶん今日の夜から、努力の日々が始まるのかなというふうに思っています。引き続き、頑張って青空が見えるように努力したいと思っています。
審査委員長 宮﨑暖さんによる総括と講評
「発想・セリフのチカラ」や「新しいものを作ろうとする意欲」に大きな可能性を感じて
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〇宮﨑さん:今回も非常にレベルの高い作品を沢山応募していただきました。次のスターになり得る脚本家を選ぶべく、面接もさせていただいて、一緒に働く姿を想像しながら真摯に審査いたしました。
個人的には、最終審査の参加は4回目になり、3年前には実写化(※)のプロデュースも担当させていただきました(※第34回ヤングシナリオ大賞 大賞受賞作『瑠璃も玻璃も照らせば光る』)。
3年前は地に足のついた作品が多かったように思うのですが、今回はジャンルが多種多様で、自由な作品が多いように感じ、たった3年でこうも大きく変わるのか、という印象を受けました。脚本家を目指す方々が、今どんなものを書きたいのか、どんなものが観たいのか、というのが顕著に表れていて、楽しく審査させていただきました。
大賞は石田真裕子さんの『人質は脚本家』。5年前に担当したドラマの失敗をキッカケにシナリオが書けなくなった小泉拓哉という脚本家が、郵便局で人質事件に巻き込まれ、その犯人が実は、彼が手掛けた作品のファンだった、という物語。
読ませていただいて思ったのが、このキャラクターとシチュエーションを思いついた時点で勝ちだったなと。ある種、リアリティを度外視したファンタジーのようなコメディ。「どうすれば面白い状況になるか」をすごくシンプルに突きつめた、という印象を受けました。
シチュエーションがすごくファンタジーぽくて、実際だとありえない状況ではありますが、そこにいる人物たちのセリフがすごく現実的で、状況とセリフのミスマッチみたいなところが笑いを誘う作品。状況がおかしいのに、話す言葉は結構リアルというか。熱を出したときに見る夢みたいな、そういう印象を受けて、ページをめくる手が止まらなかったです。そういったところから、発想のチカラとセリフのチカラを感じて、大賞に選出いたしました(※大賞受賞作は映像化され放送予定)。
佳作は三嶽咲さんの『天才クイズアカデミー』。ある進学校のクイズ研究会を舞台に、友情を築き上げる難しさや夢を追い続ける難しさ、それでも何かを成し遂げようとする登場人物3人の姿を描いた青春物語。
この作品を読んで感じたのは、企画力とテーマの新鮮さ。タイトルを読んで、本編を読み出したときに、バラバラの個性をもった3人が1つになっていく、よくある青春モノなのかなと予想していたのですが、深いテーマがそこにはあって。
3人のうち2人が仲良くて、主人公がそこに入っていくという話なんですけど、既存のコミュニティに入っていく難しさとそこに飛び込んでいく勇気の話だったりもして。結構、現代的なテーマを抱えている作品だなと、すごく新鮮でした。
三嶽さんと面接をさせていただいたときに、今の時代を切り取ったり、分析することがすごく好きな方なんだな、そして、その能力に長けている方だなと感じました。新しいものを作ろうとする意欲や気迫、自信みたいなものもすごく感じられて、そこに大きな可能性を感じまして、佳作に選出いたしました。
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フジテレビヤングシナリオ大賞の審査委員長は毎年変わりますが、どなたが担当されても「これから一緒に働く姿を想像しながら選出する」という視点は共通しているように感じます。
次回応募される方は、これまでの記者会見の模様も是非参考にしていただければと思います↓
■第35回フジテレビヤングシナリオ大賞/審査委員長・村瀬健さんに学ぶ
■第34回フジテレビヤングシナリオ大賞/記者・編集者時代を経て脚本を書く
■第33回フジテレビヤングシナリオ大賞/趣味から始めるシナリオ
■第30回フジテレビヤングシナリオ大賞/どんな脚本が賞をとるのか
■第29回フジテレビヤングシナリオ大賞/審査のポイントと受賞者のシナリオ勉強法
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