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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

創作をお休みしているかた必読!
伊参スタジオ映画祭2024 第20回シナリオ大賞 受賞者に学ぶ

伊参スタジオ映画祭2024 第20回シナリオ大賞(伊参スタジオ映画祭実行委員会 主催/群馬県中之条町、上毛新聞社 共催)。

このコンクールは、映画化を前提とした「中編」「短編」のシナリオを募集。
今回、大賞を受賞した2作品は、2026年開催予定の伊参スタジオ映画祭で初公開することを条件に、「中編の部」は200万円、「短編の部」は100万円が映画完成後にそれぞれ贈呈。

自分で書いたシナリオを、自分で映画化できるチャンスとあって、映画監督&脚本家志望者にとって毎回大注目のコンクールです。

今回の応募総数は307本(中編の部:131本/短編の部:176本)。この中から、大賞が2本(中編の部 1本/短編の部 1本)、審査員奨励賞が5本(中編の部 2本/短編の部 3本)、上毛新聞社賞(中編の部1本)、スタッフ賞(中編の部1本)が決定。

そのうち、こちらのシナリオ・センター在籍生・元在籍生の皆さんが受賞!

【審査員奨励賞】
中編の部『花火のあと』坪井篤志さん(大阪校)
短編の部『50の夜』作田勇人さん(元研修科)
短編の部『にらめっこ』藤浪睦子さん(静岡教室)
短編の部『休憩室』門前日和さん(研修科修了)

受賞された皆さんにコメントをいただきましたのでご紹介。「今ちょっと創作をお休みしている」という方は、「もう一度書いてみようかな」という気持ちになるのではないかと思います。是非お読みください。

なお、『月刊シナリオ教室』(2025年3月号)には、受賞作のシナリオと受賞の言葉を掲載していますので併せてチェックしてください。

審査員奨励賞 中編の部
『花火のあと』坪井篤志さん

=あらすじ==
高校3年生の北村慎二(18)はどうしても彼女が欲しく、仲のいい同級生の槙野花(18)と高校最後の夏に花火に来ていたが振られてしまう。帰り道は人で溢れ返り全く進まない。気まずい中、花は北村に悪態をつく。「焼きそばが食べたい」と言い出した花に、「なぜ花火に来たのに振ったのか」と聞く北村。すると花は、北村が自分を誘ったのは、レギュラーを奪われた部活仲間の斎藤翔太(18)に対する「見栄」からで、「好き」という気持ちで誘ったわけではないということを知ったからだと言う。その切ない花の顔を見た北村は、自分は本当に花のことが好きなんだということに気づき――。

〇坪井さん:『花火のあと』は、シナリオ・センター大阪校・作家集団の課題「祭」のお題で書いたものです。

その際、昔、花火を見に行った帰りに、何時間もかけて電車まで歩いたことを鮮明に思い出しまして、よくよく考えてみると、花火を見ている時間よりも帰り道のほうが長かったんじゃないかなと。

そこで、何かドラマが作れないかなと考えました。ある男性が、花火が満開に開いたときに告白するが振られてしまう。気まずいのに、人ごみの中をその女性と帰らないといけない状況になったら、どうなるだろう。こういった設定を思いつき、勢いで書き上げました。

書いているときは、とにかく面白い会話を繰り広げよう、好かれるキャラを書こうと思っていましたが、読み直してみると、自分のそのときの心情が反映されているなと感じました。そのときの自分は、いろいろな夢に破れた直後。家族もできて自分のために生きる日々は終わりか、などと考えていたときで、脚本を書くこともやめようかと思っていました。

無我夢中で夢を追いかけているときは楽しくて刹那的だったのに、その後、形にならず絶望していた自分の気持ちと、告白して撃沈した主人公の気持ちが重なったかと思います。なんとかそのときの状況から這い上がりたい。そう自分を奮い立たせて書いた作品であったと思っております。

現在も脚本に中々時間をとれない状況で、敢えて脚本のことが目に触れないようにしていた時期もあったのですが、審査員である篠原哲雄監督から「結構な想いで選んだのだから上を目指して頑張ってほしい」という言葉を本当にありがたく受け取りました。

今回の受賞で、僕自身の気持ちを大きく前に向けることができました。本当にありがとうございました。

審査員奨励賞 短編の部
『50の夜』作田勇人さん

=あらすじ==
夜。高校時代の同級生である男4人を乗せた車が走っている。1人は妻子持ちだが、あとの3人は独身でその日暮らしの50男たち。吾郎は“卒業以来会っていない同級生”に呼び出され、級長・淳志・修平とともに向かうことになった。その同級生は、高校時代、セックスアイコンで男子の憧れの存在だった大橋陽子。当時、ほとんど話したことがなかった陽子が、一体なぜ吾郎に会いたいと連絡をしてきたのか。そして、一番可愛かった陽子は現在、どんな女性になっているのか。陽子への期待と不安が高まる4人。そんな彼らを乗せた車はどんどん目的地へ近づいてゆき――。

〇作田さん:いろんなことを諦めかけていました。いや、今も諦めかけています。いつの間にか歳を取って、シナリオもほとんど書かなくなっていました。もう少し詳しく言うと、ここ数年は、普段シナリオに向き合っていないくせに、とあるコンクールの締め切りが近くなると、慌てて書いてなんとか1本出す、みたいな状態でした。

2024年も同じように、慌てて書いてなんとか1本出し、一次審査の結果を見ると、なんとか一次は通っていました。しかし、そのとき思ったのは、書き方(文字通りの意味で)は間違っていないな、と思うくらいでした。

一次審査通過作品のリストを「誰か知ってる人はいないかな。流石にいないか」とぼんやり考えながら見ていると、シナリオ・センターの同じクラスだった方の名前がありました。「まだ書いてる!」。何故か自分の名前を見たときより嬉しく思いました。

また同じ頃、ひと時一緒に映画の勉強をした韓国人の友人が、監督として商業デビューを果たし、作品が日本で公開されることを知りました。

この2つの出来事があったことで、「自分ももうちょっと抗ってみようかな」と思い、せっかくだから、ちょっとだけ抗おうとしている男たちの話を書きました。それが、今回の『50の夜』です。

『月刊シナリオ教室』(2025年3月号)に寄せた「受賞のことば」には、大変感銘を受けました審査員の松岡周作さんからの講評を一部引用させていただいておりますので、そちらも是非ご覧いただければと思います。

最後に。自分はついつい話を小さくまとめて終わらせようとしてしまうところがあるので、そうならないよう、今後は自分の思考に抗ってシナリオを書こうと思います。

審査員奨励賞 短編の部
『にらめっこ』藤浪睦子さん

=あらすじ==
彼氏に金を騙しとられた三島喜和子(38)は、だるま職人だった父・三島源(享年72)の一周忌の法要のために故郷に戻った。家の灯りに気づいた叔母の原妙子(60)がやって来て、源がだるま屋を盛り返す為に弟の三島侑二(68)から300万円の借金をしていることを愚痴る。ショックを受けた喜和子は、父の元で働いていた、だるま職人の松戸三郎(75)に借金の件を問いただしに行く。そこで三郎から、源が喜和子に後を継いでほしがっていたことを聞く。父の仕事が嫌いだったが、喜和子は葛藤しながらも、だるま屋を立て直そうと奮起する――。

〇藤浪さん:今回のシナリオは、高崎市在住で三姉妹のだるま職人の友人ができたことがキッカケとなり書き始めたものです。

「だるま」というと、昔馴染みの赤いだるまが頭に焼きついていたのですが、今は色彩も鮮やかで色とりどりのだるまが市内のあらゆる店に鎮座しています。

主人公の女性は、人生の荒波を潜り抜け、疎遠となっていた亡き父親との繋がりを懐古し、逞しく道を切り開いていきます。

『月刊シナリオ教室』(2025年3月号)に『にらめっこ』のシナリオが掲載されていますので、是非お読みいただき、迷いの中にありながらも、自身で選択肢を選び、前へ進んでいく女性。中之条での鳥追い祭りでだるまを売りさばく威勢の良い女性。立ち向かう勇気とやり抜く気迫。そして、亡き父への情愛。こういったものを、感じていただければ嬉しいです。

これまで、「長く続けるのも一つの才能」という言葉を頼りに、シナリオを描き続けてきましたので、今回の受賞はご褒美をいただけたように感じています。

授賞式後の懇親会では審査員の先生方から、率直な話をお聞きすることができ、次回からの作品作りに反映させていきたいと思ったのと同時に、大変勉強になりました。

今後も、彩りや匂いが感じられる作品作りができるよう目指し、シナリオを描いていきたいと思っています。

審査員奨励賞 短編の部
『休憩室』門前日和さん

=あらすじ==
大山高校には新校舎と旧校舎があり、旧校舎には教師用の休憩室があった。教師の小山芽衣子(32)と峯田楓(32)は休憩室をよく利用していて、馬鹿な話ばかりしていた。たまに同僚の北河原雅治(40)もやってきたが、北河原が来ると2人は無の表情になり、そそくさと部屋からいなくなった。春・夏・秋。休憩室で過ごす芽衣子と楓。そして冬。楓は芽衣子に、3月に学校を辞めることを告げる――。

〇門前さん:伊参スタジオ映画祭のシナリオ大賞にはこれまで8回応募しています。実は、最も応募しているコンクールなんです。好きなんです。

結果は1次落ちから3次落ちまでいろんなケースがありましたが、最終まで残ったのは今回が初めてでした。普段、シナリオコンクールの結果を見るときはスマホの画面を拡大し、心の中でドラムロールを鳴らしながら左から少しずつ見ていきます。

今回『休憩室』というタイトルだったので、「休」の「亻」が見えた時点でテンションが上がり、奇声を発しながら、アフリカンダンスをトイレのなかで踊りました。それぐらいうれしかったです。

『休憩室』は「自分が監督をやったときに絶対に撮影できるもの」というコンセプトで考えました。それで一場劇かつ会話劇を選択してみました。

また、実際に撮影するときにはアニメーションを組み合わせたいと考えていました。ただ脚本の時点でもう少しいろいろなことをやれたような気もしますし、キャラクターの持っている価値観がこれでよかったのか、今でも悩んでいます。

シナリオって本当に難しいですね……。
でも、うまくいこうがいくまいが、これからも書き続けていきたいと思います。

 

*     *     *

 

なお、伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞は2022年から、2年ごとの隔年開催になりました。次回開催は2026年予定。応募を考えている方は、応募作を執筆される際、是非こちらの記事も併せてご覧ください。

伊参スタジオ映画祭2022

伊参スタジオ映画祭2019

伊参スタジオ映画祭2018

伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞と函館港イルミナシオン映画祭

伊参スタジオ 映画祭シナリオ 大賞/歴代受賞作をまとめたシナリオ集を制作

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