総合的な学習の時間を使い、クラスで1本の映画を作ることになった横浜市立美しが丘小学校6年生の皆さん。
2024年6月に「動画の作り方を知りたい!」とのご連絡をいただき、出前授業「キッズシナリオ」を実施させていただきました(※)。
※その模様はこちらをご覧ください。
▼本格的な映画を作りたい!@横浜市立 美しが丘小学校
そしてそれから約半年後……。
『めくれるカレンダー』という作品を完成させ、2024年度こども動画祭(※)でショートバージョンを発表。
※その模様はこちらをご覧ください。
▼2024年度こども動画祭/動画作りは誰かを思って過ごす時間
「良い映画だったなぁ……」と感動の余韻も束の間、担任の先生から「完全版もぜひ観に来てください!」とお誘いいただきました!!!
「ぜひ観たいです!」ということで、ルンルン気分で美しが丘小学校へ訪問。
6年生の皆さんの卒業する門出も祝いつつ、お招きいただいた上映会をシナリオ・センター田中がレポート!
映画づくりを通して“子どもたちの心に残ったこと”をご紹介いたします。
=今回の概要==============
・サービス名:「キッズシナリオ~総合学習で本格的な映画を作りたい!~」(全2回)
・目的:総合での動画づくり
・対象:横浜市立美しが丘小学校 さま(6年生)
・時間:各約90分
※キッズシナリオの詳細
https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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いざ、上映!
教室の前で待っていると、私と一緒に招かれていた大人の方が2名、いらっしゃいました。6年1組の皆さんは、この映画を作るためにシナリオの授業だけではなく、演技指導も受けていたんですって!
その演技指導やサポートをされてきた俳優のお二人でした。
そのお二人と、担任の先生と、6年1組の皆さんとで、『めくれるカレンダー~完全版~』を鑑賞しました。
=あらすじ==
今を大切にせず、クラスメイトとの時間も大切にしていなかったみんなが、あることをキッカケに成長し、最後はクラスとみんなとの時間を楽しく過ごす青春ストーリー。
鑑賞して。
いやぁ、改めて、しみじみ、良い映画だなぁと思いました。
みんな思い思いに生活していて、なんとなーくバラバラなクラス。
それぞれどこかモヤモヤして過ごす中、一致団結しなければならない合唱の時間に、ついに真面目な性格のタケシが爆発。結果、合唱は上手くいかなかった。
でも……
タケシの思いを受け取ったクラスメイトたちは、皮肉にもみんなバラバラであることを露呈させた“歌”を通して、心が通じ合っていく。
その変化に田中、再び感動しました。
25分の中にみんなの6年間を感じさせてくれる、そんな作品に。
2024年度こども動画祭で拝見したショートバージョンも勿論良かったですが、今回の完全版は、それぞれの登場人物の感情(気持ち)がより丁寧に描かれていて、見ごたえがありました。素晴らしかったです!
演技指導のお二人も、感動のご様子。
(目頭を押さえる姿も……)
鑑賞後、先生から「田中さん、ぜひ感想を」ということでしたが、私は逆に皆さんに聞いてみたくなりました。
映画を作ってみて、どうだったか。
それから、どんなことがあったのか、といった裏話的なことも。
そこで急遽、時間が許す限り、チームごとに舞台挨拶をしてもらうことになりました!
チームごとに学びがあった
〇田中:それでは、『めくれるカレンダー』の舞台挨拶を始めさせていただきます!まずは「チーム撮影」の皆さんから。
・チーム撮影
〇田中:どんなことにこだわりましたか?
〇チーム撮影:「どこから撮るか」とか、監督やみんなで相談しながら撮りました。
〇田中:おー!みんなで協力しながら決めて作っていったんだね。「好きなカット」はありますか?
〇チーム撮影:みんなでサッカーしているシーンで、サッカーゴール越しのサッカーボールが映っているカットが特に好きです!光の具合も良い感じで上手く撮れました!
〇田中:あのカットだね!ロングだけじゃなくて、アップも上手く撮れてたよね。
※アップとロングについてはこちらをご覧ください。
▼ロング バスト アップ を意識
〇田中:タケシの激昂シーンもアップで撮っていて、怒りも伝わってきたし、迫力あるシーンになっていました!
〇チーム撮影:(ちょっと照れながら)ありがとうございます。
〇田中:「登場人物の気持ちに寄り添った画づくり」を心掛けながら撮影することができていたと思います!素晴らしかったです!
・チーム美術
〇田中:お次は「チーム美術」。何を作りましたか?
〇チーム美術:カチンコを作りました。
(と、チーム美術の一人が実際のカチンコを持ってきてくれました)
〇田中:おー!本物だ!ラストシーンに出てくるやつだよね。
作ってみてどうでしたか?
〇チーム美術:最初はどうしたらいいかわからなくて、先生とも相談して、技術員さんに相談したらアイデアと材料をくれて。
〇田中:ん?え?もしかしてこのカチンコ、イチから作ったの?!
〇チーム美術:はいっ!
〇田中:えーーー!!!ほんとに!?すごっ!!!
劇中でも登場し、映画づくりの象徴にもなるカチンコをイチから作ったチーム美術。そのカチンコの持ち手は黒ずんでいて、頑張った証がしみこまれてます。みんながお互いのことを思って助け合い、頑張ったことがその小道具から感じ取れましたよ!いまお話を聞いてさらに感動しました!
・チーム編集
〇田中:続いて「チーム編集」です。どんなことにこだわりましたか?
〇チーム編集:観ている人にちゃんと分かるように、シーンとシーンを繋げるにはどうしたらいいかを考えたことです。
〇田中:おー!素晴らしいですね。編集していて好きなシーンはありますか?
〇チーム編集:そうですね、やっぱり、タケシが怒ってその後の「仲良くしようよ~」って、(ムードメーカーの)友達が言うところですかね。
〇田中:確かに、あそこいいよね!
いろいろなシーンを何度も撮影していたと思うので、“素材”が沢山あったと思うんですよ。その沢山の素材から、「これぞ!」というカットを選んで、色々迷いながら編集したんじゃないかなと思います。
〇チーム編集:(うんうん!と嬉しそうに頷いてくれています)
〇田中:本格的な映画に仕上がった“勝因”の1つは、編集で登場人物の感情をしっかり繋げることができたから、じゃないかなと思います!
・チーム脚本
〇田中:お次は「チーム脚本」です。沢山の登場人物がいるので、書くのが大変ではなかったですか?
〇チーム脚本:大変だったけど、みんなで協力して書けたので。この登場人物だったら、こういう言い方するかな、とか役者の人たちとも相談して考えて書きました。
〇田中:素晴らしい!
この作品は、群像劇で登場人物もたくさん。大変だったと思います。でも、登場人物ひとりひとりのキャラクターをきちんと設定して、「こういうキャラだから、この場面ではこう言うだろうな、こうするだろうな」とそれぞれの登場人物たちの「気持ち」をしっかり想像しながら書いているので、こういった素晴らしい作品になったんだと思います。
あと、ちょっと聞きたいことが。みんなは撮影が始まる前に脚本を書き終えたんだと思うんだけど、撮影が始まってからは、現場ではどんなふうに過ごしたの?
〇チーム脚本:レフ板とかを作って。
〇田中:レフ板?! どのくらいのものをつくったの?
〇チーム脚本:あそこに……。
――みんなが指すほうを見ると、後ろのロッカーの上に大きな銀色の板が置いてありました。後ろに座っていた子がレフ板を持ちあげると、その子がほとんど隠れちゃうくらいの大きなレフ板が!
〇田中:うぉー!めちゃめちゃ立派じゃん! 脚本以外にもそういう制作ができるのすごい!
撮影でも大活躍だったチーム脚本。本当にお疲れ様でした!!!
・チーム監督
〇田中:続きまして「チーム監督」です。どんなことに気をつけましたか?
〇チーム監督:私たちの学級目標のひとつに「今この瞬間を大切に生きよう」というのがあるんですけど、それをテーマにこの映画を作る、ということに気をつけました。
〇田中:テーマを意識しながら作ったんだね。これってすごく大切なことなんですよね。撮影していると、「こういう画を撮りたい!」って、撮影することに夢中になっちゃうからね。
〇チーム監督:そうなんです。なので、絶対にテーマから外れないようにしました。
〇田中:すごいなぁ、しっかりしてるなぁ。この映画を通して何を伝えたいのかという「作品のテーマ」だけじゃなくて、いち映像作家としてどんなふうに映画を作りたいのかという「自分自身のテーマ」も、皆さんは見事に貫きましたね。作品から、皆さんのその素晴らしい姿勢がちゃんと伝わっていますよ。チーム監督、ありがとうございました!
・チーム俳優
〇田中:トリは「チーム俳優」の皆さんです。演技指導も受けたということなんですが、どんなことを頑張りましたか?
〇チーム俳優:どんなキャラクターなのか、どんな気持ちでこのセリフを言うのか、ということを考えて演じました。それから、登場人物の名前も苗字からしっかり決まっていたので、その名前から受ける印象とかも考えながらやっていきました。
〇田中:おおすごい!なにか難しいことってありましたか?
〇チーム俳優:うーん、やっぱり登場人物と自分は違う人なので、その“違うところ”を想像するのが難しかったです。
〇田中:そうだよね、難しいよね。演技指導を受けてみていかがでしたか?
〇チーム俳優:カメラの前で“自然にいること”というのが難しくて……。指導してくださった方のようには上手くいかなかったような……。
〇田中:いやいや! ほら、この前の「こども動画祭」のとき、他の生徒さんが「クラスの様子が自然だった!」って言ってじゃない!自然にできてたと思いますよ!
〇チーム俳優:……(ちょっと照れてます)、はい!
〇田中:「どうやって演じよう」とか「セリフを覚えなきゃ」だけじゃなくて、「この人物はどんなキャラクターで、どんな言い方をするんだろう」「どんな風にそこにいるんだろう」と、登場人物のことを深く考えたからこそ、映像の中で、まるで本当にいる人みたいに自然に存在することができたんだと思います。今回の経験で、チーム俳優の皆さんは「演じること」の本質みたいなものを、ちょっと掴めたんじゃないかな。素晴らしい機会になったのではないかと思います!
みんなが得たこと
こども動画祭で、他の小学校の皆さんから「もう、レベチでした……」と言わしめた本作。
今回、皆さんの舞台挨拶を聞いて、素晴らしい作品が完成した一番の“秘訣”は、「誰かを思う気持ちが、みんなにあったからだ!」と感じ取りました。
一緒に映画を作るクラスメイトたちのことを思って、
自分たちが生み出す登場人物たちのことを思って、
作った映画を観てくれる人たちを思って、
映画を完成させたことで、皆さんの中にある「人を思いやる気持ち」が
より育まれたのではないかな、と思います。
だからでしょうか。
最初に会ったときよりも、ちょっと大人になったような印象を受けました。
皆さん、もうすぐ中学1年生。
小学校最後の年に、素晴らしい経験と思い出ができましたね。
ご卒業おめでとうございます!
これからも、創造することの楽しさを味わっていただければ!
またいつかお会いしましょうね!
* * *
今回ご紹介した模様をご覧いただいて、「うちのクラスでも、総合の時間にこういったことをしたい!」という先生方や教育関係の方々。お気軽にシナリオ・センターまでご連絡いただければと思います。
また、これまでもいろいろな学校でキッズシナリオを実施してきました。こちらのページでは、様々な事例をご紹介しておりますので、ご参考までにご覧ください。
▼コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ
動画を作るときはこちらの書籍も参考にしてみてください↓
▼改訂版 『いきなり効果があがるPR動画の作り方』(「シナリオ教室」シリーズ/言視舎/企画・構成・著:新井一樹 /執筆:川村千重・内藤麻貴・田中和次朗)