シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。今日は春いちばん?南風が強く、東京では電車が止まったりして。なんだかんだと面倒を起こしながらも少しずつ春はやってきているようです。(笑)
昨夜、出身ライターの大山淳子さんが、元担当講師の柏田と私を訪ねておいでくださいました。
脚本家より小説家としてすっかり名を成してしまった大山さん、23万部を突破した「猫弁シリーズ」から始まって、ここ3年ほどでたくさんの本を出されている超売れっ子小説家ですが、新刊本を持ってきてくださいました。
新しく出された本は「イーヨくんの結婚生活」(講談社刊)
イーヨ君は伊予太という本名なのですが、5人兄弟の末っ子で、いつも、誰にでも「いいよ」っていう人なのでイーヨ君と呼ばれています。一緒に住んでいた長男が急死して、そのお通夜の席から物語は始まります。
誰も会ったことのない妊娠している長男の婚約者が現われ、なぜかイーヨ君が長男の代わりに結婚することに・・・。
謎の婚約者、そして5人兄弟、お父さん、お父さんの再婚相手、伯父さん夫婦、幼馴染と出てくる登場人物のキャラが濃いこと濃いこと。
ドラマにしたら最高だと思います。
早くに亡くなったお母さんの幽霊が俯瞰で語り、交互に登場人物のそれぞれが語り・・・と、斬新な語り口でその背景と事情がみごとに描かれていき、ぐんぐん引き込まれます。
まあ、面白くて、ミステリアスで、ラストは気持ちが温かくなって、私は午前1時から4時過ぎまで眠気も吹き飛んで、一気呵成に読んでしまいました。これこそがエンタテイメントの極致だと思います。久々に爽快な気分になりました。
おかげで寝不足ではありますが・・・。(笑)
大山さんが、昨年書かれた「おあずかりやさん」(ポプラ社刊)(大山さんの小説は「描かれた」のほうが合う気がしますが)が名門麻布中学の入学試験問題になりました。
麻布中学の先生は、この小説を問題にしたのは、想像力のある子を採りたかったからとのこと。
さすが麻布の先生。目のつけ処が鋭い!
大山さんの本は、イメージが湧いてくる、映像が見える小説なんです。
それって、大山さんはシナリオが大好きでいらしてシナリオ的に見ているからなんですね。
「おあずかりやさん」が入試問題になって、なんと父兄や学校の先生方が、この前後が読みたいと新たな読者となられ、お手紙をいただいたとか。
こんな形の読者増やしもあるんですね。(笑)
文豪の小説ではなく、大山さんのエンタテイメント小説が試験問題になる・・・なんだか世の中捨てたもんじゃないと、嬉しくなりました。
やさしくわかりやすく想像力を広げられることがどんなに素晴らしいことか、大山さんが受験生にも教えてくれました。