子どもからお年寄りまで、すべての人にシナリオの力を!
あなたの毎日に役立つシナリオの活用例がここにあります。
シナリオ・センターの新井です。
毎年、鎌倉市の川喜多映画記念館で実施している「子どもシナリオ教室」。
今年で5回目を迎えます。
毎年、一日目にドラマ作りのポイントを学んでもらい、シナリオを書き、2日目に映画を撮ります。
目的は子ども達の想像力、創造力を豊かにしていくことです。
そんな「子どもシナリオ教室」を運営する上で、気をつけていることがあります。
これは、子育てでも同じなではないかと思います。子育て経験はありませんが・・・子ども経験はありますので!
教えない!
「えっ!?」と思うかもしれません。
もちろん、どう書くのかというシナリオの書き方、ポイントは教えます。
ですが、子どもたちが、どう書こう、どう撮ろうとなった時に、「こう書いたら?こう撮ったら?」と教えたり、導いたりはしません。
ではどうするのかというと、「引き出す」ことを心がけます。教えることと何が違うのか?
引き出すというのは、子ども達の中にあるまだ言葉や形になっていない部分に想いを馳せるということです。それが、出てくるまで待っているということです。子どもに想いを馳せている限り、主役は子どもです。
子どもの頃、なんでもかんでも、自分なりに考えてみるというのが、すきだったような気がします。
考えることをなるべく減らしたいと思うのは、大人だけかもしれません(笑)
待つ!
シナリオを書く時になると、子どもによっては手が止まります。
でも、待ちます。
「こうすればいいよ」と言ってしまいがちですが、そこは我慢。なにげな~いヒントだけささやいて、スッと去る。ここがポイントです。
強いて言うなら、あえて背なかで語ります。
撮影をする時も同じです。
「そこさぁ、一番左の人は、すぐに振り向かない方がいいよ」
とカメラ担当の男の子が言うと、
「ちょっと、監督私なんだけどっ」
と、女の子の監督がそれを制します。その模様を、結局どうしたらいいのだろうという表情で、俳優の子は見ています。
そんなやりとりが、なんだかんだ続いた後、不思議とおさまるところにおさまっているから、子どもの世界というのは面白い。
物静かな女の子、気分でしゃべりだす男の子、気の強い女の子、ほんわかした女の子、仕切りたがりの男の子、いざという時一言で場を治める男の子などなど、様々な子どもたちが一つのグループにいます。最初は不協和音しか聞こえなかった彼らのやりとりも、時間を経つにつれて同じ作品を作るための和音が生まれます。
子ども達は、子ども達のルールの中で、きちんと役割を全うし始めるのです。それを、大人の都合のいいタイミングでやらせようとすると、子ども達はつまらなくなってしまって、やらされている感が満載になってしまうのです。子どもの頃に、「宿題やったの?」と言われて気分が萎えましたよね?あれと一緒です。
彼らがいい作品を作りたいという欲求を、彼らのタイミングで出てくるまで待つことが大切だと思います。
いい作品を作りたいという気持ちが、むくむくと大きくなると、自分の意見を通すことや、自分が目立つことといった、小さな自我はどこかへ消えてしまいます。子ども達が勝手に、協力しはじめるのです。
教える側が主役なんて、考えただけでゾッとします。
シナリオには、正解も不正解もありません。だからこそ、子どもとの関わり方が大切になってきます。今年もこのスタンスを、川喜多映画記念館のスタッフの方々と作っていきたいと思います。