シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。台風は過ぎ去りましたが、シナリオ・センターも各地の被害に比べたらあまりにわずかですが、1階の教室の床がびしょびしょに浸みていました。まさかの台風被害でした。
「連続テレビ小説読本」(洋泉社刊)というムック本が出ました。
NHKの連続テレビ小説は1961年に始まり、今年で53年になるのだそうです。
「今、朝ドラが面白い!」という編集部の想いから、主に21世紀のエポックメイキングだった重要作5タイトルを中心に、また20世紀の名作も含めて、出演者スタッフの証言や各論客の論評などを載せている本です。
脚本家を目指す方にとっては、とても勉強になる内容でした。
1961年から先月終った「花子とアン」で90本の朝ドラが放映されたそうです。
年表が出ていたので、何気に数えてみたら、90本の「朝ドラ」のうち14本がシナリオ・センター出身のライターの方々の作品でした。びっくり!
映画評論家の町山智浩さんのお話が面白かったです。
「『ちゅらさん』を見て朝ドラってこんなに面白いんだと思ったよ。堺正章のお父さんがすごくよかったね。(略)俺は朝ドラは、理想的な日本人像から外れた人がどれだけ描かれているかで観ている。身の回りには必ずはずれものっているじゃん?それを出さないといい人ばかりの嘘のドラマになるんだ」
「水木さんって片腕がないでしょ。それがテーマとして前面に出されず、日常の、何気ない点景として描かれているのがいい。障害や差別や死やセックスは実は日常の一部だから。朝ドラって健全な人しかでてこないけど、それって本当は不自然なことなんだよ」
「『あまちゃん』は、日本にとって非常に重要なドラマだと思う。あの震災に関わる全ての中で最高でしょ。感動とか涙を売らないで、笑わせながら皆を救ったじゃない?ものすごく価値のあることをしたと思うよ。それにこれまでの朝ドラはずーっと戦争というものに囚われてきたけど、そうじゃなくて今そこであった悲劇を題材にしたという点でもすごかったよ」
「カーネーションを映像的な象徴としてつかっていくところが映画的だった。戦争が始まって、一番苦しいときに赤い花びらが散るところとかさ。一言も戦争反対とか言わないんだよね。玉音放送を聴いても泣いたりしない。ただ『お昼にしようけ』っていうんだ。抜群にうまかったね」
「食事ってのはセックスと同じ快楽なんだと。それを抑制するなという思想が『ごちそうさん』にはあったよ。食事を作ることをとおしてヒロインが自立して成長する。『カーネーション』と同じで『戦争はいけない』とか言わない。ただ美味しいものを食べたい、それを阻む戦争ってよくないんだと視聴者が自分で判断するようにできている。意地悪な小姑の和枝さんも最高だよね。だってみんなあの人の内面の複雑さを知るうちに好きになったでしょ。最後までいい人にはならないけれど、観る方が変わったの。これぞ、ドラマだよ。『ごちそうさん』はフィクションであれだけ最後まで地に着いたままやったのは頑張ったと思う」
脚本家の背骨に迫ったお話だったと思います。明日は、出身ライターお三方のお話を中心に書かせていただきたいと思います。