シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。今日はS1シナリオグランプリの授賞式です。
授賞式では、いつも表彰状をお渡しさせていただいているのですが、受け取る側ではないのに、妙に晴れがましい自分がいます。自分自身のことではないのに、なんだか嬉しいのです。
シナリオS1グランプリになってから、もう27回にもなっているのだと、今さらながら驚きました。
シナリオS1グランプリの前身は「シナリオ募ります」という名称でした。
東宝テレビ部さんに優秀作品は放映していただくはずで始めたのですが、残念ながら、なかなか実らず、時代劇「江戸の疾風」の中で、シノプシスが通ったくらいでした。
その時のシノプシス入選者のおひとりは、なんとあの小説家赤川次郎さんでした。
閑話休題。その後赤川さんは、ベストセラー作家になられたのですが、その時出版社に紹介したのは新井一でした。赤川さんの小説家としての才能を見抜いたのですね。
シナリオS1グランプリに変えたのは、なかなかテレビドラマも作りにくくなった時代があり、それであれば、映画も2時間ドラマも1時間ドラマもみんなありにして、色々なところにシナリオ・センター自ら売り出そうと新たな形にして、今に至っています。
月刊シナリオ教室は、テレビ局、映画会社、製作会社にお配りしており、たくさんのプロデューサーが読んでくださっています。
そこから、お声かけいただいたて、チャンスをいただいたりしています。
シナリオS1グランプリの大きな特徴は、基本がしっかりできている作品が選ばれるということです。
キャラクターが魅力的であること、シーンをしっかりと描いていること、審査委員の浅田講師流に言えば、最後までとことん主人公を困らせていること、映像であることでしょうか。
それには基本の技術がものを言います。
黙阿弥の言う「めずらしきこと」「あたらしきこと」「面白きこと」は奇をてらえばできるのではありません。
亡くなった談志師匠や勘三郎さんがいつも仰っていた「型を知らずして型を崩せば形なし。型を知って型を崩せば型破り」とはこういうことです。
落語でも歌舞伎でも同じなのですね。
先日志の輔らくごを聴きに行ったのですが、新作落語ですが、やはり古典をきちんとできるからこその話の面白さに、志の輔師匠の芸のうまさに感動しました。
古典(基本)を身に着けてこそ、型破りな落語やコクーン歌舞伎などが生まれてきたのです。
昨今は、型を知らないでただ崩せばいいと思っている作品が増えています。破天荒であれば面白いのではなく、見る人の感情を揺さぶらなければ意味がありません。基本をきちんと身につけて、真の型破りの作品を書いていただきたいと願っています。
今回の受賞者から、新しい脚本家が生まれることを祈りつつ、授賞式に臨みたいと思います。(写真は昨年1月の受賞者の方々です)