シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センターの小林です。右中指がひょう疸になってしまい、わずか指ひとつのことなのに、まあ、動きの悪いこと、動けないこと。パンツ上げるのも大変だし(笑)、パソコンも打つのが大変で、やれやれです。
でも、今週末のテニスまでには、治してやる!!
昨日、六本木歌舞伎「地球投五郎宇宙荒事」を観に行きました。
もちろん、新作。荒事ですから、歌舞伎の歌舞(かぶ)く者そのもののお芝居になりそうだったので、楽しみにしておりました。
しかも、脚本は官藤官九郎さん、演出は三池崇史監督で、市川海老蔵、中村獅童さんという若手人気歌舞伎役者さんとの大コラボですから、ゼッタイに面白くなるはずと。
三池監督が「映画では、結構破壊者としてみられる私ですが、決してそうではない、伝統に培われてきた歌舞伎役者の芸や芝居を見せたいですね。表現方法はいつもの歌舞伎とは少し違うかもしれません。が、歌舞伎ファンの方からも認めてもらえるようなものになればと、精一杯やりたいと思います」とおっしゃっていましたが、なかなか難しいなあと拝見して思いました。
私は、歌舞伎の冒険はいいことだと思っており、今の伝統ある作品だって、淘汰されて残ってきたものですから、どんどん果敢に挑んで、新しい客層を掴むべきだと思っています。
菊池寛の「藤十郎の恋」とか玉三郎さんがおやりになる「天守物語」はじめ一連の泉鏡花作品・・・戦後創られたものはみんな新作といわれ、残る作品は後世に残り、淘汰されるものはされのでしょうね。
私自身は、勘三郎さんと串田和美さんのコクーン歌舞伎は欠かさずみてきましたし、野田秀樹さん、渡辺えりさん、三谷幸喜さん、宮藤官九郎さんの作品も拝見し、面白いかったです。
今回の六本木歌舞伎は、私としては、残念に思いました。
その前に勘九郎さんとおやりになったクドカンさんの「天日坊」は素晴らしい出来で、私はもう一度見たい作品のひとつです。
私自身は、出身ライターの山本むつみさんや井上登紀子さんのような歌舞伎通ではまったくなく、イヤホーンガイドに頼ってみる方ですから、偉そうなことはいえませんが、それでも、ただ「見得」だけを見せるお芝居になっていたように思えます。
「型を知って型を崩せば型破り、型を知らずして型を崩せば型なし」勘三郎さんがよくおっしゃっていましたが、そこだなあと思いました。
勘三郎さんほどの方になれば、どこまで崩していいか、どこで抑えるのかをわかった上でお客様にどう楽しんでいただこうかと創られたかと思うですが、まだ若い海老蔵さんたちは、ちょっとご自分たちの想いだけで創られているように見えてしまいました。
ちょっとゆるいとはいえ、アドリブもたさくさんあり、笑えて、面白いことは面白いし、気楽に楽しめはするのですが。
でも、「型を崩す」というのは、本当に型を知っていること。型との微妙な間合いというか、ちょっとした差異が、作品の良しあしにかかわるのでしょう。
創作するものは、常に心していたいものです。