シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。桜のつぼみもふくらんできたのでしょうか、四谷の土手は、心なしかピンク色に染まりつつある感じでホワッとしています。
寒さ暑さも彼岸まで、もうお彼岸に入っていますから、そろそろ落ち着いて欲しいものです。
先日、山本むつみさんがミソ帳倶楽部にいらしてくださいました。
骨折されているにもかかわらず、時間をオーバーしてまで、とても勉強になることをいっぱいお話してくださり、受講生の方々は大喜びされていました。
その中で私は、学びの姿勢に感銘しました。
山本さんは、新井一とは講義を最初に聞いただけだそうですが、その時に、新井が「脚本を書く力を腕につける」と言ったことが印象に残っていらっしゃるとのこと。
言葉通り毎回課題が出る、習って書く、すごく理にかなった教え方だなと思われたそうです。
自転車だって、走る理屈をいくら理解しても、転んだりしながら実際に乗ってみなければ、乗れるようにならない。書かなければ書けるようにならない。
全く同じだと思い、夢中でノートを取り、手を動かすから頭に入る。
基本は全部身につけられるから、必死にノートをとって、シナリオを書く。
東大合格のノート術ではないけれど、自分の手で書くことに意味があると。
山本さんは、プロになってからも、今でもそのノートを見直すことがある。迷ったら立ち返る場所ですとおっしゃってくださいました。
そして、作品は、途中で止めずにとにかく最後まで書く、そして批評家にならないことと、ゼミを活かすコツも。
書く以外の勉強として、脚本集などがあるから脚本を読むこと、古典の名作を観ることは、絶対にやるべきこと。よい脚本は世界がイメージできるし、名作は映像的には古くても中身が濃いので、たくさん読んで、観て欲しいですとおっしゃっていましたが、まさにその通りですね。
シナリオ・センターの講座の中で「ローマの休日」や「ゴッドファーザー」などを例にお見せしたりすると、「もっと新しいものを」とおっしゃる受講生がいらっしゃるのですけれど、それは違うのです。
山本さんがおっしゃったように、名作と言われて遺っているものは、とても優れたドラマツルギーがあり、ドラマの根本がわかるのです。
早くライターになりたくて、もう研修科などの20枚シナリオの勉強などすっ飛ばして、コンクールに挑戦されようとする方もたまにみられますが、本当の意味での勉強にはなりません。
本当にプロになりたいのなら、基本がしっかりついていなければ大成できません。よしんばビギナーズラックで入選しても、長く続かない、デビューだけで終わってしまったりします。
45年間、シナリオ・センターをやってきて、いやというほど消えていってしまった人を見続けてきました。
今活躍されている出身ライターのすごさは、長く仕事を続けていらっしゃること。基本の底力をお持ちだからこそです。
山本むつみさんのお話を伺って、基本の力をつけることの大切さ、20枚シナリオの威力をまざまざと感じました。