シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。ふくらみかかった桜も、ちょっと頭を隠して・・・もうお彼岸も過ぎたのにねぇ。
日本海側は雪が、九州ではPM2・5が、花粉も今年はひどく飛んでいるようですね。
こういう時期は、体調管理をしっかりとしましょう。
昨日、本科生の森美樹さんが、ご本を持っておいでくださいました。
森さんは、1995年に講談社X文庫ティーンズハート大賞佳作を受賞されてから、「十六夜の行方」ほか文庫書下ろしを何冊も書かれ、絵本の原作なども書かれていらっしゃいます。
一時、筆をおいた時期もあったのですが、「40歳を過ぎて体力も気力も衰えていく中、好きなことや、やりたいことを隠して悶々としたまま過ぎていく時間を見つめているのが嫌になった」とのことで、大人の女の小説に挑戦。
みごと12回R-18文学賞読者賞を受賞され、「主婦病」で新潮社より単行本デビューをしました。おめでとうございます。
R-18文学賞は、10回目までは女性が描く官能小説コンクールでしたが、11回からは女性の感性で描く小説コンクールということで三浦しおんさん、辻村深月さんに審査員も変わり、女による女のための・・・というキャッチフレーズがある様に女性の気持ちを描く小説を求めています。
「主婦病」(新潮社刊)は、エンタテイメントでありながら文学性の高い作品に仕上がっていると思います。
主婦の精神的に、肉体的に悶々とする姿を、切ないほど痛いほどのタッチで描いています。
女性の性は、男性と違って、精神性と切っても切り離せないつながりをもっていることがよくわかる、ほとんどの主婦が共感する作品だと思います。
連作のどこかの主人公の気持ちは、女性なら、主婦ならどこかにある、ださなくても秘かにある・・・共感性の高い描き方で、読者賞をおとりになったことが納得されます。
森さんは、伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞でも、昨年審査員賞をとられたのですが、そのときに「文学的」といわれたそうで、なるほどと思いました。(笑)
この「主婦病」は、文学的でありながら、非常に映像的で、官能的でもあり、エンタテイメント的でもあり、ドラマにしたら主に30代から50代の主婦の共感を呼ぶことと思います。
この連作の構成を巧みに生かして、連ドラにするといままでにない女性向けの面白いドラマになりそうです。
森さんは、小説を書いていらっしゃったのに、シナリオを学ばれています。シナリオの技術が、より一層すばらしい効果を上げているようです。
連ドラになって、原作・脚本ってクレジットされたいですね。
「好きなこと、やりたいことを隠しているのが嫌になった」と森さんはおっしゃっていました。
表現したいと思ったら、やはりその場に身をおかなくっちゃ・・・なにごとも始めなければ始まりません。